ベトナムでブタに特有の感染症が広がり始めています。4年前に中国で大流行したものと同一のようで、対策が遅れれば豚肉の供給に支障をきたす可能性も指摘されています。

ビナファイナンスドットコムから引用:
 ベトナム全土で豚の青耳病の感染が急速に拡大している。今年3月末以降、ハイズオン省やハイフォン市など6省・都市の68地区で発生し拡大が続いている。

 この感染症、正式には「豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)」といいます。青耳病と通称されるのは、チアノーゼによって耳や鼻が青あざのように変色することからこの名がついたそうです。ブタとイノシシに特有のウイルス性感染症でヒトには感染しませんが、他の病気を併発させることで症状は悪化し、感染後に発症しなかった(不顕性感染)としても食肉としてヒトの口に入れることはできなくなってしまいます。

独立行政法人農畜産業振興機構の「月報・畜産の情報」から引用:
 発症した子豚の下腹部などが、呼吸のたびにヘコヘコと波打つような動きをするため、当初はヘコヘコ病と俗称された。母豚では妊娠後期の流死産や産子異常が、ほ育豚では死亡率が高くなり、呼吸困難や虚弱、開脚姿勢などが、育成・肥育豚では食欲不振や咳を伴わない呼吸困難、増体率の低下、死亡率の上昇などの症状が見られるが、不顕性感染も多い。人への感染はない。

 中国では2006年の夏から2007年にかけて大流行があり、31ある省の半分以上にまで拡大しました。その結果、2006年の1年間だけで40万頭以上のブタが病死、豚肉の価格が急上昇して市民生活に影響を及ぼしました。

北京で発行されている「人民日報」から引用:
 農業部は、ブタの奇病・高病原性青耳病(blue-eared pig desease)が一部の省でまばらに発生していることを明らかにした。データによると、全国で(2007年)1~5月に発病したブタは計4万5千頭、1万8千頭が死亡している。

 その後、ウイルスは中国からベトナムに流れ込み、2007年の夏にベトナムで最初の大流行が起こります。これを見たカンボジアが、ベトナムを含む隣国からのブタと加工済み豚肉の輸入を禁止する事態になりました。

VIETJOから引用:
 ベトナムの青耳病ウイルスは、中国で流行しているウイルスと99%同じ型であることが判明した。 

 日本でも1990年代前半から発生例が見られはじめ、現在は届出伝染病として監視の対象になっています。豚インフルエンザなどと同様に、豚舎で蔓延が起こると、大量の殺処分に発展することもあります。
 しかもベトナムでは、2007年の大流行で10万頭以上を殺処分したにもかかわらず、病気に対する認識がなお甘い地域が残っているといいます。過去には殺処分されたブタの死骸を掘り出し、食肉として市場に出そうとしたとんでもない奴もいました。

VIETJOから引用:
 ゲアン省ジエンチャウ郡ジエンフック村警察は(2008年4月)17日午前2時ごろ、青耳病で殺処分されたブタ11頭を盗み出しで運搬していたとして近くの村に住む男2人を逮捕した。(中略)この逮捕を受けてジエンハイン村人民委員会が調べたところ、17日に処分した青耳病のブタ74頭のうち73頭が盗み出されていたことが発覚した。

 政府では中国からワクチンを緊急輸入するなど予防に全力を挙げていますが、一度発症してしまうと対症療法しかないことや、ウイルスの伝染性が非常に強くワクチン自体の臨床効果が低いという問題があります。

ビナファイナンスドットコムから引用:
 グエン・タン・ズン首相はこのほど各省庁及び地方に感染の拡大阻止と早期制圧を指示する公電を送り、感染を確認した際には規定に沿って公表することなどを各地方に指示した。

 PRRSの完全制圧には、中央、地方、そして養豚業者の三位が一体となった対策が重要です。そして先端技術を持つ日本の協力も必要でしょう。