ベトナムのコメの輸出高は、ここ数年で史上最高を何度も更新しています。昨年はついに600万トンに達しました。今年は、収穫高(新米)と昨年から繰り越した在庫(古米)を合わせた輸出量が700万トンに達する可能性も出てきました。

時事通信から引用:
 ベトナム紙ルーラルトゥデーは21日、2010年の同国コメ輸出について、既に過去最高となる660万トンの輸出が決まっていると報じた。同紙によると、同国は720万トンのコメを輸出できる見通し。

 コメの輸出高は、必ずしもその年に取れたイネの量だけで決まる訳ではありません。前年やその前から国内備蓄用として倉庫に納められていた在庫が輸出に回ることもあります。日本では1年前からの在庫を「古米」、2年以上前からの在庫を「古々米」といいますが、2期作や3期作が行われているベトナムでは、日本のように年に1回しか取れない国と違って、1年で古米と断言するには語弊があります。

東京ガスのホームページから引用:
 秋から翌年の梅雨までを「新米」、梅雨明け以後を「古米」とする分け方があります。これは、梅雨の頃に虫が発生したりして米の質が落ちたからです。今はほとんど低温倉庫で保管するため品質が落ちることもないので、現実的な区分けとはいえなくなりました。

 2期作や3期作が行われれ、その収穫時期をもって計算するとなれば、次の期のイネの刈り取りが行われる時期には前回収穫されたコメは古米になってしまいます。ですから、2期作地域では収穫から1年経過しているコメは古米ではなく古々米。3期作なら、古々々米になっているのです。
 しかし、東南アジアでは主に栽培されている長粒米をご飯にするときに粘り気が少ないほうが好まれる傾向があります。古米は新米に比べて粘り気が少なくなるため、古米を好んで食べる家庭もあります。

 日本では、古米の市中消化を進めるために「たくわえくん」というブランドが起こされました。たくわえくんに使われる古米は内部では「持越米」といい、最先端の貯蔵技術を持つ日本のことですから最大で5~7年程度まで持ち越されることがあります。

JA全農のホームページから引用:
 備蓄米を一定期間保管したあと販売する「回転備蓄方式」を取っていますが、 この制度の運営にはみなさんのご協力「収穫→備蓄→食べる」が不可欠です。また、この備蓄米をおおよそ半分以上使用して販売されているお米には備蓄米のPRマーク「たくわえくん」がつけられています。

 それでも、アジアの輸出業者は刈り取られて1年以内の新米を最優先で輸出に回してしまうので、古米や古古米になっても輸出に回らない在庫が出てくるのです。
 幸い、ベトナム産米はこの数年、タイとの価格競争に勝って輸出量を増やしてきましたが、それでも国内主食用に備蓄される在庫はかなりの量に上ります。

農林水産省のホームページから引用:
 コメ、種子、肥料を備蓄する制度があり、備蓄の一層の強化を目指している。主食であるコメの輸出余力があるため、特に自給率目標の設定はない。
VIETJOから引用:
 国内の備蓄米は現在365万トンあり、契約済みの分を輸出した後もさらに165万トンの輸出が可能だ。

それらが古米になってから輸出に回せるようになると、下手すると輸出高がその年の生産高を上回ることもあり得ます。
 しかも、主力の長粒米(いわゆるタイ米)だけでなく、そこに目をつけているのがベトナム米の最大の輸出先、フィリピンです。

日本青年会議所のホームページから引用:
 戦える日本農業を目指してはどうか。低タンパク米を作っている。ジャポニカをベトナムで作ってフィリピンで売っている。(中略)国内だけでなく海外を見る。

 とはいえ、フィリピンも古米の在庫を溜め込んでいるという指摘もあり、消化できるかは未知数。700万トンを達成できるかは、フィリピン市場のコメの消化状況はもちろん、タイの政府在庫米がどれだけ捌けるかにもかかっています。

ジェトロ(アジア経済研究所)のホームページから引用:
 コメは貧困者が多いアジア・アフリカの重要な主食。(中略)今はアフリカが一番の輸入国。

 タイではアフリカ諸国への輸出を強化していますが、そこでどれだけの量が捌けてくれるかは、ベトナムにも、特に在庫米の輸出転用に影響を与えることになります。