正規のブランドを装って市場に流通する密造、密輸タバコは、世界中でかなりの量が出回っています。アジアでは、北朝鮮が麻薬と並ぶ外貨獲得手段として国を挙げて取り組んでいるとされますが、ベトナムにもかなりの被害が及んでいることが明らかになりました。
ビナファイナンスドットコムから引用:
ベトナム・タバコ協会とブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ベトナム会社は12日、ダナン市で、「タバコと酒類の生産及び販売分野における行政違反処罰」をテーマのセミナーを開催し、ベトナム・タバコ協会から、密輸タバコによりベトナムでは毎年3兆5000億ドンの税収が損なわれていることなどが発表された。
ベトナムに密輸される紙巻タバコは、マールボロやマイルドセブンといった国際ブランド品です。国際ブランド品は一部がライセンス生産されているものの、多くは香港やフィリピンなどからの輸入に頼っており、今回のセミナーを共催したブリティッシュアメリカンタバコ(BAT)は、ビナタバとの合弁工場「BAT-Vinataba」を通じて、日本未導入の最高級ブランド「ステイトエクスプレス555」、「ダンヒル」などをライセンス生産。他のブランドも輸入で販売しており、ASEAN圏の多くの国で取り扱われていない「KENT(ケント)」「ラッキーストライク」なども免税店を中心に出回っています。
ベトナムでは未成年者の喫煙が未だ法律レベルで禁止されていないこともあって、外国タバコメーカーとして国内トップを走るBATにとっては中国に次ぐ超有望市場です。
公益財団法人健康・体力づくり事業財団「最新たばこ情報」から引用:
一般に、青少年に対する規制は実行が困難である。特に十代の若者たちは年上の仲間や、時には親から紙巻たばこを入手することが多いからである。さらに、たばこの消費が増加している低所得諸国では、このような規制を実施し守らせるために必要なシステムやインフラ、およびノウハウが、高所得諸国よりはるかに少ないのである。
ここでの減収とブランドイメージ破壊は絶対に避けなければなりません。密輸は業界にも恩恵があるといわれますが、BATビナタバという拠点を持つBATの立場を考えると、ベトナムに第三国からの密輸品が入ってくるのは論外。ましてや北朝鮮のように密造品を世界中に輸出しようという輩はそれこそA級戦犯も真っ青の非難対象です。
BATビナタバがライセンス生産する正規品の地位を守り、売り上げを伸ばすことで、ベトナムの税収安定に寄与するだけでなく、BATビナタバの活動を長期安定的に行うことができるという意味合いがあります。
公益財団法人健康・体力づくり事業財団「最新たばこ情報」から引用:
密輸が存在することでたばこ産業自体も恩恵を受けることになるという。密輸の影響についての研究では、密輸たばこが総販売数の大きな割合を占めるようになると、課税・非課税分も含めてすべての紙巻たばこの平均価格は低下し、紙巻たばこ全体の売上が増加することが示されている。これまで輸入ブランドを締め出していた市場に密輸たばこが出回ると、これらのブランドへの需要が高まり、その結果市場シェアも伸びることになる。
逆にベトナム唯一のメーカーであるビナタバはラオスに向けて、国産ブランド品「ERA(エラ)」を輸出していますがごく少数です。カンボジアで生産されている「ARA(アラ)」も、ERAの現地ブランドと言っていいでしょう。国際ブランドの密輸が増えれば、国産ブランドの消費は減り、国産ブランドメーカー(ベトナムでいえばビナタバ)から得る税収が落ち込むだけでなく、国産ブランド工場に葉タバコを納品している農家も死活問題となることがあります。
ビナファイナンスドットコムから引用:
報告によれば、ベトナムに密輸入されたタバコは2007年が約6億3000万箱、08年が7億箱、09年は8億箱に上り、国内消費量の20%を占めたという。
ふくちゃんの調べによりますと、タイでも取り締まりは強化されているもののカンボジアやラオス経由の密輸を完全に食い止めるところまでは至っていません。しかも、主要な国際ブランドだけでなく、タイの国産ブランド「クロンティップ」の偽物が周辺諸国を相手に貿易の対象となっているといいますからたまったもんではありません。
バンコクで編集されている「newsclip」から引用:
タイ税関は(2009年8月)17日、タイ製のたばこ「クロンティップ」の偽物5万箱や衣料品、かばんの偽ブランド品など5,000万バーツ相当の海賊版を押収したと発表した。「クロンティップ」の偽物はレンチャバン港の輸入貨物の中から見つかった。
クロンティップに比べれば全然販売価格の安い、ERAの偽物が出るとはとても思えませんが、出てこないという保証はないだけに、ビナタバも戦々恐々としていることでしょう。