15日未明、ホーチミンシティ行政圏トゥードク区のインスタントラーメン工場「コルサミリケット」から出火、工場と倉庫、延べ1,000平米を全焼しました。
VIETJOから引用:
 15日午前3時ごろ、ホーチミン市トゥードク区リンチュン地区のコルサ・ミリケット食糧食品株式会社で火災が発生し、同社の工場と倉庫約1000平米が全焼した。この火事でインスタントラーメン63トンが焼失、生産ラインも大きな損害を受けた。 

 在庫のラーメン63トンが全焼したとありますが、63トンというのはどれくらいの量になるのでしょうか? ASEAN域内最大のブランド、ママー(タイプレジデントフーズ)は、標準的な袋入り(1袋6バーツ)が55グラムだそうです。そこから計算すると、63トンは63000キログラム、1キログラムは1,000グラムですから...、63,000,000/55で、なんと114万5,000食分が灰燼に帰した計算になります。
 114万5,000というのは、カントー直轄市行政圏の人口にほぼ匹敵するので、カントー市内に住む赤ちゃんから大人までの全員が、ある日のお昼、一斉にラーメンを食べた量に相当するという、途方もない数字になります。
 タイプレジデントフーズと同様に、1箱36袋入りで箱詰めしていくと、3万1,800ケース分。重量ベースでも標準的な20フィート海上コンテナ4個をびっちり満載にするだけの量でした。

 ベトナムでは、インスタントラーメンの最大手は日系の「ビナエースコック」です。200年に国内で生産された40ないし50億食のラーメンのうち、65%という圧倒的なシェアを獲得。日本では日清食品ホールディングス(日清食品、明星食品)が50%を占めますが、エースコックは新たなフロンティアを求めてベトナムに来て成功した訳です。

エースコック日本本社のHPから引用:
 人口約8,600万人のベトナムでの即席めんマーケットは、いまや年間消費量が約40億食の規模にまで拡大しており、エースコックベトナム社は、年間26億食を超える販売実績を持つ国内No.1企業にまで成長しました。

 ビナエースコック以外にも、地場メーカーが50社ほどあるといいます。今回火事を出したコルサミリケットは、3位争いをしている有力なメーカーでした。

ハノイのコンサルティング会社「オリエントビジネスソリューションズ」のHPから引用:
 日系ビナエースコックが65%のシェアで市場をけん引し、地場アジアフードがシェア20%で2位につけている。

 2008年に52億食を生産した日本の市場規模を、今後数年間で上回ることは確実とみられます。そんな中の思わぬ事故。ビナエースコックにとっては相手の失点に助けられてさらにシェアを拡大という展開になるのかもしれないですけど、そうなると地場のマイナーブランドを探すのが楽しみな日本のファンには残念な状況になっていくかもしれません。
 ところで原因について、行政圏警察当局は高圧送電線につながる配電盤の故障ではないかとみています。ホーチミンシティ行政圏では計画停電がまだ残っており、火事が起こった14日深夜から15日未明にかけては、工場の周辺地区が計画停電の対象になっていました。

VIETJOから引用:
 火災の原因はまだ分かっていないが、この区域が停電から電気が回復した後まもなく火の手が上がったという。

 火事が起こったのは、計画停電の時間が過ぎ送電が再開されてすぐのことだったといいます。即ち、送電再開後に高圧の電流が流れたことで配電盤がショートし、火を噴いたのではないかというのです。そして深夜で社員は全員帰っており、自衛消防隊のような組織もなかったので初期消火すらできず、あっという間に工場全体が火の海になってしまったというと考えられるとのことです。
 日本でもまだまだ大規模事業所や危険物を扱う化学工場以外では自衛消防隊が整備されていないところが多いのに、中国やベトナムでは尚更です。

総務省ホームページ「法令データ提供システム」から引用:
消防法第14条の4  同一事業所において政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所を所有し、管理し、又は占有する者で政令で定める数量以上の危険物を貯蔵し、又は取り扱う者は、政令で定めるところにより、当該事業所に自衛消防組織を置かなければならない。

 ましてやコルサ社のように内資100%の事業所では、外資の入っている企業に比べて管理が徹底していません。タイの上場企業では工場全体にオールリスク型損害保険をかけている例もありますが、コルサ社はかけていなかった可能性が高く、リスク管理の面でも問題を浮き彫りにする形になりました。

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