どこの国でも、法人を作るには登記をしないといけません。日本なら法務局、ベトナムであれば省や市の計画投資委員会に対して行います。ところが、設立認可を獲得しているにもかかわらず、最終的に立ち上げを断念する会社もかなりの数に上ることが明らかになりました。
時事通信から引用:
11日付のベトナム紙トイバオキンテーによると、ホーチミン市計画投資委員会はこのほど、2009年12月31日までに会社設立申請を行い、認可が下りているにもかかわらず許可証を取りに来ないケースが400件ほどあることを公表した。
会社設立許可証というのは、日本で言うところの登記簿謄本を受け取る前に、ベトナム政府が法人としての地位を認めた旨を書いた書類です。即ち、会社設立登記が終わったことを証明する書類だとお考えいただければ早いでしょう。許可証を受け取って、初めて登記簿の作成や業種ごとの許認可といったステップに進むことができます。
日本では、法務局で設立登記の審査が終わった時点で登記簿が作成されます。登記簿が作成されたら、登記簿謄本を取得することができ、業種実施のために関係当局の許認可が必要であれば、この登記簿謄本を使って次のステップへ進みます。
これが(中華民国)台湾では、設立登記完了後に行政当局から出される公文を郵便で受け取って次に進む形式になっています。ベトナムもよく似た形で、この公文に相当する「設立許可証」が作成されます。しかし、台湾と違って許可証は代表者が直接、関係当局へ許可証を取りに行かないといけないのだそうです。
原則としてベトナム国内資本主導での設立を希望する発起人は本店の所在地を管轄する省ないし直轄市の人民委員会に取りに行きますが、外資主導で工業団地や輸出加工区への入居を希望するのであればその管理委員会、投資規模が大きかったり、マルクス主義の原則で政府主導が義務付けられている業種への進出を希望する場合はハノイの計画投資省本省になる場合もあります。許可証を取りに行かないと設立手続き自体が完了しません。
独立行政法人日本貿易振興機構のHPから引用:
所轄官庁は書類を受理してから15日以内に投資許可証を発行する。投資許可証は、営業許可証を兼ねる。
このため、許可証を取りに行く段階までに会社の営業開始を断念して、設立の手続きを打ち切る例があるというのです。日本では法務局で審査が終わった後、問題がなければ補正日に連絡はなされないので、設立が認められたことに気がつかないということはあり得ますが、その後に資本金全額を払い込まなければなりませんから、まず忘れることはないでしょう。お国事情の違いはありますが、それにしても設立の途中打ち切りだなんて、日本ではまず考えられません。どこかのヤブ医者の妊娠中絶じゃあるまいし...
ホーチミンシティ行政圏計画投資委員会の発表ということは、会社の本店が置かれる予定だった場所がホーチミンシティ行政圏内という訳。他の省や市の分は含まれていません。つまり、ベトナム全国では同様の事例が、数千から下手すれば数万件溜まっているのではないかと想定されます。
2009年12月までに手続きが終わっているということは、時期的にも少なくとも半年以上経っているということ。ここまで来ると、設立を断念したと法務当局側が認識できても何らおかしくありません。
時事通信から引用:
同委員会では今後、これらの企業の資料をすべて廃棄する予定で、対象の各企業は設立されなかったと見なすとしている。
設立が認められなくなれば、当然営業許可は取り消されます。申請者が再度、会社を起こす気になっても、手続きは最初からやり直しです。
ベトナム共産党と政府機関にまだまだ残る、官僚的体質を象徴するといえますが、今回の事案では登記を申請する起業家の側にも問題があるといえます。政府では官僚体質の打破に力を入れていますが、社会主義一党支配体制を取っている以上、国民と党員の協力がなければ完遂は出来ません。
投資、事業計画は綿密に、そして途中で断念するような甘い計画を作るべきではありません。途中で断念するくらいなら最初からやるべきじゃない。当校が手がけている、語学の勉強と同様のメカニズムです。