ガソリンと工業用アルコールを混ぜた環境にやさしい自動車用燃料、それがガソホール。世界最大のサトウキビ生産国ブラジルから始まったガソホールの流れは、アジアにも広がってきました。そして、取り組みの遅れていたベトナムでもついに、本格販売が始まることになりました。
VIETJOから引用:
ベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)は7月29日、8月からエタノール5%混合ガソリン(ガソホールE5)の一般販売を開始すると発表した。
ガソホールは1970年代にブラジルで普及が始まりました。1990年代には原料供給の混乱もあって一時廃れかかりましたが、2000年代に入って原油価格の高騰もあって復活。タイの石油元売最大手PTTではサトウキビやタピオカをベースにしたバイオマスエタノールが20%混入された「ガソホールE20」を既に売り出しており、アルコールの比率を85%まで上げた「ガソホールE85」も既に商品化されています。自動車メーカーでも、ガソホールE85に対応するエンジンや車種の開発を進めており、三菱自動車は既に対応車種をタイで生産、ホンダ(本田技研工業)やトヨタ自動車も基礎的な開発は完了しているとしています。2008年の後半には、タイでガソホールが爆発的に普及し、石油成分100%のハイオクガソリンが駆逐されました。
独立行政法人農畜産業振興機構のHPから引用:
同時期に原油価格が高騰したことおよび、2008年8月から09年1月までの6カ月間、政府がガソホールの消費拡大のため、ガソホールに係る物品税をリットル当たり0.0165バーツ(1バーツ=2.95円、2009年3月末日TTS相場)まで引き下げたため、ガソホール価格がガソリンよりも大幅に安くなったことによるものである。
産油国でもあるベトナムでは、これまでガソホールへの取り組みは遅れていました。前にも書きましたがガソホールよりも低品質の石油成分100%ガソリン(オクタン価83)のほうが主流となっていました。
前記事「オクタン価83のガソリンだなんて」から再出:
ところが、レギュラーガソリンの92よりもずっと品質の落ちる、オクタン価83のガソリンも未だに存在します。オクタン価83のガソリンは、日本では既に売れなくなっている代物です。しかし、高オクタン価ガソリンの分留技術を持たない第三世界ではオクタン価83でも十分粗悪ではないという見方でまだまだ流通しています。
現に、ペトロリメックス(ガソリン小売総公社)が販売しているレギュラーガソリンよりも、オクタン価83のガソリンのほうがリッターあたりの単価が若干安く、地方を中心に使われてきた経緯があります。しかし、サトウキビ生産国でもあるベトナムでガソホールが生産されないというのは、例えベトナムがコペンハーゲン合意に基づくCO2削減の数値目標を持たない発展途上国であったとしても時代の趨勢に合わなくなってきたことの現れといえるでしょう。政府も長期ビジョンの中でガソホールの推進策を打ち出していました。
VIETJOから引用:
このバイオ燃料の販売は、政府の「2015年までのバイオ燃料発展および2020年までのビジョン(案)」に盛り込まれており、国内エネルギー産業発展の新たな一歩とみられている。
ペトロベトナムでは、これまでハノイ首都圏の1ヶ所のスタンドでガソホールE5をテスト販売していたのを、今月から順次、ハノイ首都圏の他のスタンドや、ホーチミンシティ行政圏、ハイフォン、ブンタウ、ハイズオンの各都市合計20ヶ所に導入していきます。その後、ダナン、フエ、カントーでも発売を開始し、再来年から全国での本格発売に踏み切ります。将来的には、5%からスタートするアルコールの混合比率を上昇させることも視野に入れています。
既にタイでは10%が当たり前。20%(E20)も商品として確立しており、対応車種は四輪からモペット(小型バイク)まで広がってきています。ホンダはベトナムで製造しているモーターバイクのうち、既に「ウェイブiAT」「クリックi」など主力車種はタイ仕様に合わせてE20まで使える仕様にしています。
ホンダ日本本社のプレスリリースから引用:
「Wave110i」は新開発した排気量110ccのエンジンを搭載したカブタイプで、燃費は1Lあたり57km(ECE40モード:実用モード燃費)と従来エンジンに比べ18%向上し、出力は25%の向上を実現した。近い将来導入が予定されている第6次エミッション規制値にも適合し、E20(エタノール 20%の混合燃料)に対応する。
ヤマハ発動機やスズキもE20対応のモーターバイクを順次発売しており、世界有数のバイク王国ベトナムでガソホールが爆発的に普及する下地はもう整っています。オクタン価83のガソリンが駆逐された後は、石油成分100%ハイオクの駆逐となるのでしょうか?