金融市場の整備が遅れていたベトナムでは、外国の投資家が株式の売買を始めたのはこの数年のお話。そのために、マネーロンダリングなどの犯罪に使う例が後を絶ちませんでした。これら「悪い投資家」を排除し資金の透明性を担保するため、財務省は新たな政策を打ち出しました。

時事通信から引用:
 10日付のベトナム紙トイバオキンテーによると、同国の財務省はこのほど、ベトナム企業における外国人投資家の出資と株式購入に関するガイドライン通達を公布した。

 ハノイ、ホーチミンの両証券取引所に上場している株式を売買するには、ベトナムの証券会社に口座を作らなければなりません。ほとんどの証券会社は窓口での口座開設しかなく、オンライン専業のVNダイレクト証券のような会社であっても、口座開設は窓口か郵送で行うようになっています。

 証券会社に口座を作ったら、今度はそこに資金を入れないといけません。窓口にドル現金ないしはドン現金を持っていくか、指定の口座に振込みをしますが、送金の指示を郵便またはFAXで行わなければならない(日本の文書扱いに相当)のがミソです。

 日本では文書扱いの振込はほとんど廃れ、ATMやインターネットバンキングからの振り込みはすべて電信扱で営業時間中なら瞬時に相手の口座へお金が入ります。タイでは以前は小切手を相手に渡すのが主流でしたが、ATMによる電信扱いの振り込みも当たり前になりました。しかし、ベトナムではまだまだ株売買など資金の透明を確保すべきところでは、文書扱いによる振込みが使われています。

 VNダイレクト証券ではさすがに窓口へ現金を持ち込むということはできませんが、他の証券会社では窓口へ資金を持ち込むことができます。そうなると、第三国で違法ビジネスや犯罪行為によって得た資金をベトナムに持ち込んできてのマネーロンダリングに、ベトナムの証券会社が使われる可能性が高くなります。一部では、既にそういう連中たちの標的になっているという説もあります。

前記事「逃亡者の楽園はパタヤだけじゃなかった」から再出:
 合法的にベトナムに入国してきた犯罪者が、例えば半年マルチビザを延長して最大2年間滞在を続けたり、あるいは不法残留になっていくなどして、いつの間にかベトナムに定住してしまうのです。そして、彼らは一般市民としてベトナム社会に溶け込み、何不自由ない日々を送ったり、中には日本でいうところの「引きこもり」のような活動をしながら、次の犯罪を考えたりする人もいます。

 ベトナムに来てまで家に引きこもっている連中は、資金源として株売買を考えるといいます。似たようなことはタイでもありますが、日本人が日本(東京市場)の株をオンラインで売買し、資金はほぼ100%、日本国内の口座で決済されます。そうなると、下手な取引をすればすぐに足がついてしまいます。日本国内では株券電子化や証券会社店頭での現金授受廃止(ATMを設置している会社もある)といった反マネーロンダリング政策が実行されていますが、これがベトナムで、証券会社の店頭で現金決済して売買すれば、足がつかない可能性も残っています。中国から人民元の偽札なんて持って来られたら、それこそ大損害です。

VIETJOから引用:
 ベトナム北部で唯一外国人受刑者の収容も行うタインスアン刑務所には中国、ラオス、韓国、カンボジア、フィリピンなど様々な国籍の受刑者約200人がいる。(中略)中でも麻薬犯罪に関わったラオス人と偽札犯罪に関わった中国人の数が多い。

 そこで、外国人がベトナムで金融商品に関する取引を行う場合は、ベトナム国内の商業銀行に口座を作らせ、そこに入金して決済を行うように義務付ける方針です。

時事通信から引用:
 それによると、外国人投資家がベトナム企業への出資に参加したり、株式を購入したりするためには在ベトナムの商業銀行に投資資金口座を開設しなければならない。株式の売買、出資金の譲渡、分配された配当金や利益の活用、海外への送金など、ベトナム企業への投資に関連するあらゆる活動はすべてこの口座を通して行わなければならないとしている。

 VNダイレクト証券では既に導入されている方式ですが、これをすべての証券会社の顧客、および進出企業に拡大しようという訳です。計画投資省の認可を受ける外国直接投資でも、現地企業との合弁や買収であれば対象になるとのことです。現地法人に配当を出させて外国の本社へ送金することも同様。

フジクラのニュースリリースから引用:
 2009年6月26日付でお知らせしました、タイ王国における当社出資現地法人の統合に関し、統合後の新会社の財務戦略上の観点から、以下のとおり統合に係る連結子会社3社から剰余金の配当を受領します。

 ただし、現地法人からタックスヘイブン国(最寄であれば香港)を経由して送金した場合は現地に届いた時点で非課税となるため、脱税を完全に防ぐことはできないとの声もあります。

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