社会主義体制下のベトナムでは、あらゆる賭博行為が禁止になっています。このためホーチミンシティ周辺に住む上流階層を中心に、賭博が公認されている他の国へ行って一勝負、という動きが見られます。最も身近なのは、カンボジア国境のモクバイですが、最近はマレーシアのゲンティンハイランドや、アジア最大のカジノがあるマカオまで旅行に行くベトナム人もいます。
 そこで政府は、ベトナム人向け海外ツアーのコースを考える時に、カジノや競馬といった賭博場を外せと通達しました。それら施設からベトナム人を遠ざけるようにせよという政府側の取締りに対する強い態度が伺えます。

VIETJOから引用:
 観光総局はこのほど旅行会社各社に対し、ベトナム人向けの海外旅行ツアーを実施する際、旅行客の安全を守るための法規を順守するとともに、カジノなどとばく場への入場をツアープランに組み込まないよう求める通達を送付した。

 背景には、今年2月に開業したシンガポールのカジノに外国人観光客が多数訪れていることがあります。

シンガポールで編集されている「AsiaX」から引用:
 総合リゾート「リゾート・ワールド・セントーサ(RWS)」内のカジノが2月14日、営業を開始した。シンガポール初の合法カジノで、4月には新都心の総合リゾート「マリーナ・ベイ・サンズ」でもカジノがオープンする。政府がカジノを認可したのは観光客の海外からの呼び込みが狙い。

 ただシンガポールも、自国が初めて解禁したカジノで国民がハマることのないような策を考えました。外国人は入場無料、一方でシンガポール国民と永住権所持者からは入場料を取ります。

AsiaXから引用:
 (シンガポール)国民および永住権所持者は入場に100Sドル(約6,400円)かかるため、外国人とは入り口が別。

 ベトナム人向けのシンガポールツアーに、カジノが含まれる可能性ができたのを悟った政府は、カジノに行った参加者が社会主義の発展に対する悪影響を持って帰ってくると判断した模様です。
 ホーチミンシティの金持ちがモクバイのカンボジア側で勝負しているのと同様に、シンガポールでは、船に乗って公海上まで出て勝負、という例もあったといいます。

AsiaXから引用:
 香港の投資銀行CLSAのシンガポール代表、ハートリー氏は「シンガポール人相手の賭博ビジネスは規模が小さいというのが一般的見方だが、そうとは言えない。(中略)船に乗り込み、公海上で賭博を楽しむ国民が多いことを考慮する必要がある」と語った。

 それと同じことがベトナムでもあり得るというのです。

東京で発行されている雑誌「アジアン王」2010年3月号から引用:
 船頭は60歳くらいの婆さんだ。「これに乗って秘密の遊び場へ行くんだよ」とのこと。(中略) 船上ビアオム!? ベトナムにこんな隠れ風俗があったとは... (中略) しかも、こんな場所だから公安の心配もない。

 ベトナム領内のメコン川本流は、カンボジアのプノンペンに入港する外国商船のために公海と同じ扱いとされているため、行政圏が及びません。社会主義革命によってなくなったとされる賭博や性風俗が、これ以上入り込んだら...。マカオのカジノや、香港の競馬が同じ社会主義国の中国に返還された後も維持されたのは、西側の植民地だった両地の資本主義自由経済体制を一定期間は堅持するという「一国二制度」があったからこそで、ベトナムには一国二制度の前提となる場所も、やっている余裕もありません。

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