ホーチミンシティ近郊のドンナイ省で当時2歳の幼女を殺害したとして、強盗殺人に問われていた当時14歳の少女に対して、有罪判決が言い渡されました。日本でも似たような事例はありましたが、解釈的にもベトナムの法令は国際標準に近づきつつあることを証明する貴重な判例となりました。

VIETJOから引用:
 ピアスを奪うために当時2歳の女児を殺害したとして殺人罪と強盗罪に問われた15歳の少女に対する控訴審判決で、ホーチミン市最高裁判所は15日、禁固10年の初審ドンナイ省人民裁判所判決を支持し、減刑を求めていた控訴を棄却した。

 日本の法律では、犯行当時満14歳に満たない少年少女の犯罪は刑事処罰できないことになっています。しかし12歳、解釈によってはプラマイ1歳の11歳でも刑事法廷に引き出すことができないとはいえ、少年院送致される可能性があり得ます。また死刑は犯行時点で18歳以上の被告人に科されます。無期懲役は17歳以下の者に対しては原則として大人の死刑に相当する刑を減刑した場合に使われるとしてきましたが、2000年の法改正で当時17歳以下の被告人にいきなり無期懲役を科すことも可能になりました。

外務省「児童の権利条約に関する第2回政府報告」から引用:
 2000年11月に成立した少年法等の一部を改正する法律により、無期刑を科すか有期刑を科すかを、裁判所が選択できることとされた。

 彼女が問われた強盗殺人罪のように、死刑か無期懲役しか法定刑がない罪名で14歳以上17歳以下の少年が起訴相当になった時は、死刑→無期懲役、無期懲役→10年以上15年以下の有期懲役に自動的に減刑すると規定されています。

総務省HP「法令データ提供システム」から引用:
少年法第51条:罪を犯す(した)とき18歳に満たない者に対しては、死刑をもって処断すべきときは、無期刑を科する。
2  罪を犯すとき18歳に満たない者に対しては、無期刑をもって処断すべきときであっても、有期の懲役又は禁錮を科することができる。この場合において、その刑は、10年以上15年以下において言い渡す。

 今回の事件と良く似た日本の事例は、最近でいえば酒鬼薔薇事件です。酒鬼薔薇事件の時は、精神鑑定の結果問題ありとして、健常者なら刑事処分相当でしかも大人なら死刑間違いなしだったところ、医療少年院送致で叩き直されることになりました。
 これに対して今回の事件では、当時14歳だった少女の精神状態は健全であったと判断されました。

VIETJOから引用:
 少女は被害者の幼女がお菓子を食べている隙にピアスを外そうとしたが、激しく泣かれたため首を絞め鼻と口をふさいで殺害、遺体を黒いごみ袋に入れ自室の洋服だんすの中に隠して遊びに出かけた。少女は奪ったピアスを売って手に入れた20万ドン(約1000円)で買い物をしたり、ゲームをしたりしていた。

 そして、今回とまったく同様の事例が日本でも見つかりました。今から50年以上も前の1957(昭和32)年のことです。

「少年犯罪データベース」から引用:
 兵庫県神戸市の雑木林で、中学1年生(13)が同居している従兄弟の女の子(5)を殺害、翌日に発見者を装って通報したが、12.6に家出して警察に保護され、追及されて12.8に自供した。友人の中学2年生(14)2人に「殺人をすると勇気が持てる」と言われ、誰を殺せと指定はされていないのに、折り紙を盗むために幼稚園の塀を乗り越えようとしているところを女の子に見られ、厳しい祖父に叱られることを恐れたこともあって山に誘い出し、探偵小説で知った方法で絞殺、アリバイ工作もしていた。

 彼女もアリバイ工作をしていたといい、犯行はある意味卑劣です。もし彼女が立派な大人であれば確実に無期懲役になったでしょう。

VIETJOから引用:
 事件後、少女は被害者の行方を捜す警察に白をきり捜索活動にも参加していたが、犯行の2日後に異臭に気付いた家族が被害者の遺体を発見したため逮捕された。

 50年前の日本での事例の時、当時13歳の犯人は逮捕ではなく補導され、少年院に送られています。しかし、その後殺人事例で犯行当時14歳に達している者はほぼ刑事処分相当になり、有罪判決が下される例が多くなっています。ベトナムでは刑事処分を科せる年齢が日本よりも低いとはいえ、今回の判決で彼女に禁固10年の判決を下したのは、同様の事例が日本で起こったとしても適正な判例であるということができるでしょう。そこから更なる減刑を求めた控訴を棄却したのも、国際基準に照らして適正であるといえます。

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