どこの国でも、親しい人の誕生日にプレゼントを贈る習慣があります。しかし、度が過ぎてもいけません。振られた女性の自宅に本物の爆弾を持って行った男が、公安省に逮捕されました。

VIETJOから引用:
 メコンデルタ地方カントー市ニンキエウ区警察は2日、1年前に女性に振られたことを根に持ち、その腹いせに女性の家に手榴弾を届けた男を拘束したと発表した。

 逮捕された19歳の男は、1年程前に振られた年上の女性が好きで好きでたまらなかったらしく、それが逆に憎悪の念を高めていきました。ある日、男は自分の恋心を告白しますが、そこで女性に受け入れてもらえなければ殺すなどと発言し、無理やりに愛を迫っていたのです。

VIETJOから引用:
 女性は警察に被害届を出し、昨年9月にメコンデルタ地方バクリエウ省出身のズイという男から告白されたが拒否すると、受け入れなければ殺してやると脅迫を受けたことがあると証言した。

 それから1年の歳月が過ぎ去り、再び9月がやってきました。男は女性の誕生日を知っていたようで、女性の自宅で行われていたパーティに友人を装って現れます。しかし、どこかの国のようにそこで自爆テロだとか銃乱射だとか、派手なことをしようという勇気はありませんでした。

共同通信から引用:
 メキシコ北部シウダフアレスで1月31日未明、民家で開かれていた高校生らのパーティーに、車で乗り付けた約15人の武装集団が押し入って銃を乱射、大人3人を含む14人を殺害し、14人にけがを負わせた。

 男はきちんと包装された、ごく普通の箱を家族に渡してすぐにその場を立ち去ります。部屋で女性が開封してみると... なんと、中には手榴弾が入っていました。しかも、本物。どこかのサスペンスドラマで死体が発見されるときみたいに絶叫しながら放り投げでもしたら、家の1軒や2軒すぐに全壊、女性はおろか家族までも爆死してしまいます。カンボジアではベトナム戦争から内戦期にかけて埋められた対人地雷が今でも処理されずに猛威を振るっている、しかも現場のカントーからカンボジア国境までは100kmもないだけに、とても他人事ではありませんでした。

東京のNGO「テラルネッサンス」のHPから引用:
 (カンボジアでは)1970年から約30年に及ぶ内戦中に、紛争4派(政府軍、クメールルージュ、シハヌーク派、ソン・サン派)によって狭い国土に大量の地雷が埋設され、世界で最も地雷埋設密度の高い国と言われています。また、現在地雷と同程度の被害を出している不発弾(UXO)は、ベトナム戦争の際に米軍によってカンボジア・ラオスにも大量の爆弾が落とされたものが、現在でも大きな被害を及ぼしています。

 女性は手榴弾を慎重に扱い、公安省へ連絡。証言を元に、公安省は女性に告白していた19歳の男を割り出すことに成功。男が民間防衛隊に勤務していることも把握します。任意で事情を聞いたところ、犯行を認めたため殺人未遂の容疑で逮捕しました。

VIETJOから引用:
 民間防衛隊職員の19歳の男を割り出し任意で取り調べたところ、自分がやったと認めたという。

 民間防衛隊というのは、「全民国防」路線の中で正規の軍隊である人民軍とともに非常事態に備える民兵組織です。日本で言えば予備自衛官に近いようなものでしょう。

日本語Wikipedia「徴兵制度」から引用:
 予備役と民兵が300~400万人。予備役将校の職業はさまざまで、高級官僚や大学教員も少なくない。

 ベトナム戦争時代に旧共和国政府が少数民族を編成してできた「民間非正規防衛隊(CIDG)」が起源で、1970年に旧共和国正規軍に編入された後、社会主義共和国誕生後の人民軍体系見直しの過程で再興されたものです。
 ASEAN域内の他の国にも予備役の制度がありますが、ベトナムの民間防衛隊はその中でも最も大掛かりなもので、ベトナム戦争で超大国アメリカを相手に勝利しただけのことはあります。シンガポールも20万人以上の予備役や民間防衛隊を編成していますが、ベトナムの防衛隊制度はまさに桁違い。だからといって、今回のような事件が起こってはたまったものではありません。
 民間防衛隊の装備は、陸軍のそれに準じるため、手榴弾やグレネードランチャーなどは保管庫に多数眠っています。逮捕された19歳の男は民間防衛隊に勤務していたこともあり、兵器の扱いには慣れていました。そして、保管庫から装備品を持ち出すタイミングを探ることもできました。

VIETJOから引用:
 男は手榴弾を民間防衛隊の保管庫から盗み取ったと話している。

 しかし、1年も想いを引きずった末にこんな事件を起こしては、彼の将来が思いやられますわな...

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