携帯電話上位3社(ビナフォン、モビフォン、ベトテル)は、情報通信省に料金の値下げを申請していましたが、最近、それが却下されたことが明らかになりました。
ビナファイナンスドットコムから引用:
郵政通信グループ(VNPT)傘下のビナフォン、モビフォン及び軍隊通信総公社・ベトテルは今月上旬に政府へ料金を20%程度の引き下げ提案を申請したが、承認されなかった。
ASEAN域内ではタイやシンガポールで国内通話料の引き下げ合戦が激しさを増しており、タイ2位のDTACは、自社ユーザー同士なら1分あたり25サタン(0.7円=600ドン)というプロモーション料金を出してきています。これに対し、ベトナムはまず事業者の採算を第一とする方針を打ち出しました。
ビナファイナンスドットコムから引用:
ベトナムの通信管理機関は、コスト以下でサービスを提供することを防ぐ為、携帯事業会社に対して電話料金15%以上の引き下げを禁止することとした。
ベトナムでは、携帯電話大手3社はすべて国営企業。後発グループの4社もすべてに公的資本が入っています。このため、ベトナム国内にある電話回線の8割を占める携帯部門が万が一赤字になれば、ビナフォンとモビフォンを運営しているVNPTは、採算の取りにくくなってている郵便部門と固定電話部門を抱えるだけにますます大赤字になってしまいます。それだけでなく、VNPTとベトテルから国庫へ納められる納付金がなくなってしまい、財政にも大きな影響を及ぼすのです。
これに対し、ASEAN域内を含めた東アジアの他の国では純民間資本で運営されている携帯電話会社が多くなっています。例えばタイでは大手3社(AIS、DTAC、truemove)がすべて純民間資本で、上部といえる国営組織(CATテレコム、TOT)に巨額の事業権料を納めています。逆にCATテレコムが運営する「CAT CDMA」と、TOTの「TOT3G」は、民間の後塵を拝して大きく出遅れています。
バンコクで発行されている「週刊タイ経済」から引用:
携帯電話サービス大手のうちDTACとtruemoveはCATテレコム社と、アドバンスド・インフォ・サービス(AIS)はTOTと事業権契約を結んでいる。民間会社が通信ネットワークを自前で構築、所有権をCATとTOTに譲渡した後に事業権を得て通信サービスを提供している。DTACは通信サービス収入の30%を事業権料としてCATに支払っている。DTACは07年に総額87億バーツをCATに支払った。また現在の事業権契約は2018年までとなっている。
シンガポールのシングテルや韓国のKTも旧国営組織から独立して民間主導の経営になりました。一方、日本は旧国営の流れを汲みながらも完全民営化されたKDDIと、最初から純民間資本のソフトバンクモバイル、事実上の国営として持ち株会社に国の株式保有義務が残っているNTTドコモが並存しています。
非国営の携帯電話会社が着実に利益を上げ、各国政府に莫大な法人税を納めているのに対し、国営企業の体制を取るベトナムの携帯大手が国庫納付金を納められないという最悪の事態は、何としても避けなければなりません。その上で、コスト面の問題を解決して利用者に最も有利な料金を提示しなければならないので、大手3社は苦悩しています。
ビナファイナンスドットコムから引用:
情報通信省通信局長であるPham Hong Hai氏によると、現在、携帯電話事業のコストについて算定途中であり、その結果を検討していないうちに、15%以上の引き下げを承認することはできないとしている。
とはいえ、大手同士での競争は後発4社のシェア拡大を阻害しかねません。それにもかかわらず、もし1社が先頭を切って値下げに踏み切れば他の会社も同様の値下げをしなければならなくなり、消耗戦に陥ってしまうのです。
ビナファイナンスドットコムから引用:
しかしながら他の企業、特にベトテルが値引きするなら、市場シェアを維持するためビナフォンとモビフォンは料金を引き下げざるを得ない。
日本で10年ほど前に航空運賃の値下げ合戦がありましたが、常にANAが先頭を切ってJALが追いかける形でした。そのうち、JALは経営体力を消耗して会社更生手続きに追い込まれています。このままの競争が続けば、ベトテルとVNPTのどちらかがJALと同じ轍を踏みかねないと政府は判断している、という風にお考えいただければ早いと思います。
後発開発途上国を脱しても、国民1人1人の生活が本当に豊かになって、毎月、いやプリペイドですから1回の携帯電話料金をより多く払えるようにならなければ、体質は最終的には変わらないでしょう。日本のようにポストペイドに事実上一本化されている国がむしろ珍しいくらいですが、ベトナムでもポストペイド携帯の割合を増やしていくことがある意味、打開策かもしれません。、