ベトナム政府は、公務員の最低賃金を引き上げると発表しました。しかし、タイと比べてまだ半分以下。タイの民間企業の最低賃金にも及ばないものです。
VIETJOから引用:
政府は25日、公務員などの最低賃金を定めた政令28/2010/ND-CP号を公布した。それによると、最低賃金は5月1日から現行の65万ドン(約 3130円)から73万ドン(約3520円)に引き上げられる。
タイの最低賃金は県ごとに異なり、一番高いバンコク首都圏では日給206Bt.*30日=6,180バーツとされます。最も低いメーホンソン県でも、151Bt.*30=4,530バーツ。この中間値を取って、5,355バーツが平均的な最低賃金だと仮定します。今日の為替レートでドル換算すると、165ドルという数字が出てきました。
一方、ASEAN圏内で最も生活水準が高いシンガポールには、最低賃金の制度は存在せず、労働者の需給によってのみ決まる市場原理主義が取られています。
独立行政法人労働政策研究研修機構のHPから引用:
シンガポールには最低賃金制度は存在しない。賃金は、労働力の需要と供給により決定される。政府、使用者、労働組合の代表からなる全国賃金審議会 (NWC)が長期経済目標に沿って、賃金政策について政府に勧告するとともに、賃金引き上げに関するガイドラインを示している。
マレーシアにも全業種を対象にした最低賃金制度はなく、限定的に導入されるなどしていて、タイの最低賃金よりも安い水準で働いている人すらいます。
一般財団法人国際労働財団のHPから引用:
マレーシアには最低賃金制度というものがありません。そこで、MTUCは積極的に政府に働きかけて、最低賃金制度を導入するよう要求しています。これもまたご多分に漏れず経営者側は反対しています。政府の対応ですが、どっちともつかない態度をとっています。政府が今やっているのは、委員会を設立してある産業部門についてだけ、それについて研究しようということをしています。つまり、経済全部門ではなくて、ある一定の部門だけとで、現在構想されているのがサービス部門と農業部門です。
一方、中国は31の省・自治区ごとに最低賃金の制度が定められています。
独立行政法人日本貿易振興機構の「JETRO通商弘報」から引用:
広東省人力資源・社会保障庁は(3月)18日、「広東省最低賃金基準を調整する通知」を公布し、最低賃金を5月1日から引き上げると発表した。今後、各市はこの通知に基づき最低賃金を改定する。平均して2割程度の上昇になる。
ベトナムも基本的には中国やタイと一緒ですが、公務員ないしは国営企業、自国資本の私有(民間)企業、それに外資主導の民間企業で規定が異なります。今回改定されるのは、公務員ないしは国営企業についてのもので、私有企業については1月1日付で改定済みです。
VIETJOから引用:
政府はこのほど、国内企業と外資系企業の最低賃金を定めた政令をそれぞれ公布した。来年1月1日に施行される。新しい最低賃金は現行のものと比べ8万~18万ドン(約400~910円)引き上げられている。
1月に行われた私有企業の最低賃金改定とほぼ同じ内容を、公務員や国営企業にも適用するというのが今回の狙い。ただし、公務員と国営企業は全国一律ですが、私有企業については地域によって4段階に分かれています。
今回適用される5月からの最低賃金73万ドンを今日30日のレートでドルに換算すると、38ドル。タイの最低賃金の5分の1です。私有企業でも4種地域(ハノイ首都圏、ホーチミンシティ行政圏、ダナン、ハイフォン以外の大半の地域)にある内資主導の企業では同等ですから、如何にベトナムが安い労働力の宝庫として注目されているかがお分かりいただけると思います。