ベトナム国籍企業の決算は、日本などのように自由に決算期末を設定できる訳ではありません。以前は、全ての会社が暦年決算(12月31日が決算期末)で統一されるように法律で規定されていました。そのため、ハノイとホーチミンシティの証券取引所に上場している、歴史の古い会社は9割以上が暦年決算を採用しています。特に国営企業はほぼ100%暦年決算と言っていいでしょう。

 その後、2006年の国会で統一企業法が制定された際に規制緩和があり、3月31日、6月30日、9月30日締めの決算も可能になりました。ですから、3月期決算の会社が多い日本やシンガポールから進出してくる外資系企業は、3月31日締めを選択して本社の決算と合わせることができるようになりました。社会主義市場経済の枠の中で少しでもグローバル経済体系についていくことを目指そうとしているベトナム共産党の経済運営方針が徐々に浮き彫りになってきました。

香港の会計事務所「NAC Global.net」から引用:
 決算日は原則12月末日となっていますが、合理的理由があれば企業の選択により3月末日、6月末日、9月末日の各四半期を選択することも可能です。

 しかし、暦年、3月末、6月末、9月末以外に決算期を置くことは現在も法令でできません。日本の小売関連企業に多い2月締め(この場合、中間期が8月に来ることから「ニッパチ」と通称される)は、ベトナムでは不可能なのです。昨年、コンビニエンスストアとして初めてベトナムに進出したファミリーマートも、日本本社の決算期は2月28日ですが、ベトナム現法の決算期は、パートナー企業に合わせる形で暦年決算を採用しています。
 一方で、ベトナムでインスタントラーメン最大手になっているエースコックの日本本社は暦年決算を採用。同社は戦後すぐの創業当初から暦年決算だったため、偶然の一致だったのですが、ベトナム進出にあたって財務面でやり易かったのは言うまでもありません。

 決算期が終わると決算の発表、そして株主総会へと進みますが、暦年決算ですと発表の時期がテト(旧正月)と前後します。従って、ベトナムに拠点を置く外資系会計事務所にとっての師走は、2月にやってくるということになります。

 これに対してお隣のカンボジアでは、ポルポト極左独裁時代に会社のシステム自体が破壊されてしまいました。厳密な意味で国際基準を満たす株式会社は内戦終結から20年が近くが経とうとしている現在も1社もないとさえ言われています。社会主義共和国発足直後から1990年代前半までベトナムが経験した国営企業中心の時代と似ていなくもありませんけど、当時からベトナムの国営企業は暦年で決算を出していたので、そういう意味ではグローバル基準にだいぶ近づいています。

 ベトナムと同じ社会主義体制でも、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が現在も取っている国営企業(連合企業所)中心の計画経済では各企業所ごとの決算も出ないといいますからもっと深刻です。「計画を○パーセント超過遂行した」と報じられるだけで、計画の数値がどれくらいなのかも一切分かりません。

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