日本・ベトナム協力委員会第3回定例会合が17日と18日の2日間、東京で行われました。ベトナム側からはファム・ザ・キエム外務大臣(副首相兼務)が訪日。日本側は外務大臣・岡田克也(民主党、衆議院三重3区)が共同主宰者として対応しました。
 ベトナム側から随行した国営VNA通信の記者が東京発で報じたところによりますと、岡田外相は政権交代からもうすぐ半年を経ようとしている鳩山民主党政権下でも、日本は引き続きベトナムを戦略的パートナーと位置づけ、より多くの分野で協力や交流を促進することを望むとする開会宣言を出しました。
 キエム外相はインフラ整備面での継続支援を強く希望すると応え、その代表例としてハノイとホーチミンシティを結ぶ高速鉄道計画の早期具体化が挙げられるとしました。

 ベトナム新幹線計画の具体化にあたっては、実験線的な性格を持つ新路線をまず作ろうという構想があります。ハノイ・ノイバイ空港と、ハノイの中心市街にあるハノイ駅を結ぶ47kmの区間に空港連絡鉄道を引く計画があり、これを将来の新幹線計画に向けた基礎的な技術確立に使うというものです。日本の総合商社、伊藤忠商事(東京都港区、東証1部上場)が中心になってまとめた構想は、早ければ2月にもベトナム政府に提出され、5月の通常国会で承認される予定です。

日本経済新聞から引用:
 国営ベトナム鉄道(鉄道総公社)は新幹線方式で整備する「南北高速鉄道」について、2012年に試験線の建設を開始する。バン会長兼最高経営責任者(CEO)が日本経済新聞に明らかにした。試験線は全長が45キロメートルで、ハノイ中心部とノイバイ国際空港を直結する計画。試験線の着工で、ベトナムの高速鉄道事業は具体化に向けて動き出す。

 ASEAN圏内有力国の国際空港は、日本や欧米と違ってかなり新しい時代まで空港連絡鉄道がないところがほとんどでした。国鉄在来線が利用できたバンコク・ドンムアン旧空港(タイ)は例外として、チャンギ空港(シンガポール)は2003年にMRT(地下鉄)が構内に乗り入れるまで、20年以上も市内との交通をバスに依存してきました。クアラルンプール・KLIA空港(マレーシア)は開港とほぼ同時に連絡鉄道が整備されましたが、2000年代に入ってからのことです。バンコク・スワンナプーム空港(タイ)は鉄道が整備されているものの、開業が遅れています。マニラ・ニノイ空港(フィリピン)やジャカルタ・スカルノ空港(インドネシア)は鉄道整備の構想すらありません。

 ベトナムでは、ハノイ・ノイバイ空港とホーチミンシティ・タンソニャット空港のどちらにも、鉄道が整備されていません。タンソニャット空港はホーチミンシティの市街地から近いこともあってまだマシだとも言えますが、特にノイバイ空港は市街地から相当離れているために、首都の空港として見劣りするのではないかという声が一部で上がっています。この批判に応えるため、ノイバイ空港と市街地を結ぶ空港連絡鉄道の構想が浮かび上がり、鉄道総公社(国鉄)は伊藤忠商事をコンサルタントに指名し、構想の具体化が進められてきました。

 構想では、ハノイ駅とノイバイ空港の間を複線電化の鉄道で結びます。軌間(レールの幅)はベトナム国鉄の在来線で使用されている1,000mm(メーターゲージ)ではなく、1,435mm(標準軌)。新幹線も標準軌、複線電化で設計されていて、電圧だけが違う(交流25,000V)ので、空港連絡鉄道を先に建設すれば、高架橋などの基礎部分の技術を新幹線に流用できる可能性があり、新幹線技術の全面的な導入を求めるベトナムの国益に適うだけでなく、日本の大手ゼネコンにとっても将来の新幹線本体の受注に向けて大きな足がかりをつかむことができます。

 総工費は少なくとも200億円程度と見積もられ、日本政策金融公庫・国際協力銀行からの円借款でかなりの部分を賄うとみられています。国営VNA通信はキエム外相が、日本からの新規円借款供与枠増加に対して謝意を示したと報じましたが、その一部を、空港連絡鉄道の整備に振り向けてほしいという狙いを、日本の建設業界関係者はもちろん、鉄道ファンの一部も既に感じ取っているはずです。

 新幹線がハノイからホーチミンシティまでの全線で総工費5兆円と見積もられただけに、距離、そして投資規模こそ新幹線の50分の1にも満たないですが、新幹線という工事期間も規模も桁違いの「本丸」に向けた、第一歩を踏み出すには十分過ぎます。新幹線でもハノイとホーチミンシティの両方から建設を始め、最終的にダナンでつないで全通させることを計画しているといい、空港連絡鉄道の工事を落札できた業者は、その後の新幹線第1期部分(ハノイ〜ビン)の入札で、優位に立てることが容易に予想できます。

 車両は新幹線規格ではなく、在来線規格で最高時速100km程度を想定。バンコク・スワンナプーム空港で整備が進んでいるエアポートリンクの最高時速160kmには劣りますが、それでもノイバイ空港とハノイ駅の間を40分で結ぶと見積もっています。当初は4両編成でスタートし、将来的に輸送力の増強を検討していくとのことです。

 ベトナム政府では2010年中に発注業者が決まれば、2014年までの完成を目指して直ちに工事契約に調印、着工させたいとしており、借款の規模や入札の方法について、国際協力銀行との間で調整が進むとみられます。

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