ラオスのビエンチャンで行われたASEANの会合で、2015年の時点でベトナムを含む後発4カ国と先発6カ国の間に大きな経済格差が残っている場合、ASEAN経済共同体の立ち上げは延期せざるを得ないとの見解が出たことが明らかになりました。
ラオス国営KPL(パテトラオ)通信から出た報道を、ベトナム国営VNA通信が報じ、さらに日本国営ラヂオプレス通信が確認しました。
「ASEAN加盟諸国間発展格差縮小プロジェクトに関する関係実務者会合」と題されたこの会合は、2月1日(月)、ラオスのビエンチャンで行われ、スリン・ピスワン事務局長(元タイ外相)とラオス計画投資省の実務者に加え、JICA(独立行政法人国際協力機構)ラオス事務所のスタッフも出席し、実質的な「ASEAN+1(日本)」会合となりました。
2005年の第1回東アジアサミット(クアラルンプール)でぶち上げられたASEAN共同体構想は、当初は2020年の立ち上げを予定していました。
日本内閣府(首相官邸)HPから引用:
2020年までにASEAN共同体を実現することを完全に支持することを確認した。これに関連して、ASEANは、ASEAN統合イニシアティブ(IAI)を通じたASEAN加盟国間の開発格差是正、ビエンチャン行動計画、各種ASEANの計画やイニシアティブ、並びに大メコン地域(GMS)経済協力プログラム、イラワジ・チャオプラヤ・メコン経済協力戦略(ACMECS)、ブルネイ・インドネシア・マレーシア・フィリピン東ASEAN成長地域(BIMP-EAGA)といった準地域開発努力を通じたASEAN共同体構築への努力及びASEAN加盟国間の開発格差是正への支援を強化するとの日本の約束に対して感謝を表明した。
その後、第2回東アジアサミット(2007年1月、セブ)共同宣言でASEAN共同体の立ち上げ目標は5年繰り上げられて2015年になります。
日本外務省HPから引用:
2015年までにASEAN共同体を実現しようとしているASEAN諸国との友好・協力関係をさらに強化し、地域の繁栄と安定のために貢献していきたいとの考えを冒頭述べた
ところが、先発6カ国(タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ブルネイ)と、1990年代後半になって加盟した後発の4カ国(ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー)との間には、大きな経済格差が立ちはだかっています。ベトナムは後発開発途上国から脱却する事に成功しました。しかし、ベトナムの国民1人あたりGDPはまだ、タイの3分の1。ラオスは4分の1、ミャンマーに至っては、ベトナムのさらに半分以下。これではどうしようもありません。
さらに、ミャンマーは軍事独裁当局に対するアメリカとEUによる経済制裁の影響で、外国からの投資がASEAN圏と中国、インドに事実上限られています。日本もミャンマー向けODA(政府開発援助)は人道的かつ緊急を要しないと判断されれば供与しないとしています。軍事独裁当局は今年11月に総選挙を予定しているものの、総選挙の結果が認められたとしても、すぐに経済制裁解除、投資再開になるとはとても思えません。
スリン事務局長は、「IAIに基づく発展格差縮小プロジェクトの成果は、後発4カ国すべての間で共有されるかもしれない」と述べました。これは、2015年1月1日の時点で後発4カ国のうち、1カ国でも遅れの目立つ国が残っていれば、ASEAN共同体を予定通り創設させることはできず、延期することになるとの見方を示したものです。
そして、後発4カ国の経済格差を解消していくには、+3(日本、韓国、中国)はもちろん、「ASEAN対話パートナー」と呼ばれる先進諸国、特に旧ソ連時代からベトナムの盟友として活動してきたロシアや、ラオス、カンボジアに太いパイプを持つオーストラリアからの強力な援助引き出しが欠かせないと強調しました。
日本外務省HPから引用:
日本は、メコン地域を重点地域とし、メコン地域全体およびカンボジア、ラオス、ベトナム(CLV諸国)の各国への政府開発援助(ODA)を拡充するとの政策を継続する。日本は、メコン地域の更なる繁栄のために、今後3年間で5000億円以上のODAによる支援を行う。
この5,000億円だけでなく、中国やロシアからの引き出しも重要だという訳です。