今年1月の大地震で壊滅的被害を受け、このまま滅亡かとも噂されたカリブ海の島国ハイチ。復興支援としてベトナムは、3G携帯電話システムの整備に取り組むことになりました。
ビナファイナンスドットコムから引用:
ベトテルのチュン副社長はこのほど、ハイチで約3億ドルのプロジェクトを展開すると発表した。計画では、2011年第1四半期にハイチで携帯電話通信サービスの提供を開始する予定で、ハイチにBTS無線基地局装置を1,000カ所以上設置する。
ハイチで今年1月に起こった大地震は、全国民の3分の1が被災者となり、22万人という途方もない死者を出しました。これはハイチの全人口の2%にあたり、市内だけで100万人の人口を抱える首都ポルトープランス(英語読みポートプリンス)では単純計算で10人に1人が死亡したというとてつもない数字です。
現地では2G携帯電話は整備されていたものの、地震直後にはほとんどが不通になりました。固定電話の復旧は遅れたものの、2G携帯電話の応急復旧が行われました。
カリブ海諸国で携帯電話を展開する「Digicel」のプレスリリースから抄訳引用:
Digicel社のネットワーク復旧作業は継続中ですが、現在セルサイトの大部分が通信を再開し、順調に稼動しています。Digicel社はハイチで最大かつ最良のネットワークとして、通信を提供しているセルサイトの数が、どのプロバイダより多いという状況を継続しており、ネットワークを使用するお客様の数も増え続けています。
携帯電話は応急復旧したものの、本格的な復興の過程で、2Gから3Gへの移行を視野に入れなければならなくなりました。しかしハイチはアメリカ大陸内で最貧、ましてや地震で壊滅的被害を受け自国だけで整備をするのは到底不可能です。1990年のドイツ統一で当時の東ドイツが消滅して以来の国家滅亡もあり得るとの見方もなされていたほどです。
世界各国が支援に乗り出す中、ベトナムはインフラの再整備を支援することにしました。具体的には固定電話2位、携帯電話3位のベトテル(軍隊通信総公社)が現地の国営企業だった「ハイチテレコム」に1億ドルを出資。ハイチテレコムは、この資金とともに2億ドルを借り入れ、携帯電話の基地局を2G(GSM)対応から3G(W-CDMA)に切り替えていく予定です。7月からポルトープランスを中心に工事を始め、来年春までに3G携帯電話のサービスを開始したいとしています。
ベトテルでは、2Gに加えて3Gでも国内向けに自社オリジナル機種を販売する予定になっており、このノウハウがハイチでも生きます。ベトテルは、固定電話とよく似た筐体に携帯電話アンテナとSIMカード挿入部分を組み込んだ家庭や事業所用の端末も製造しており、ベトナム国内だけでなく、カンボジア子会社「メットフォン」やラオス子会社「ユニテル」でも販売。両社が爆発的に利用者を伸ばす足がかりとなりました。
VIETJOから引用:
チュン副社長はこのほど、年内にベトテルブランドの携帯電話を市場に投入する予定だと明らかにした。(中略)中級品としては第3世代(3G)携帯電話を主に生産する予定。
ハイチでは先行するDigicelも電話機の大幅値下げを実施し、建物倒壊などで電話機が壊れたり、失ったりした利用者を支援しています。
Digicelのプレスリリースから抄訳引用:
携帯電話機Digicel Coral 150の価格の大幅値下げ。すでにディスカウントプライスだった20米ドルから、12米ドルになりました。
12ドルというのは、TLSバンコク校があるタイの通貨バーツに換算すると、なんと380バーツ(1,100円)。iPhoneを世界一安く売ると言ってるソフトバンクモバイルもそれこそ真っ青です。それゆえ、ベトテルとハイチテレコムが3Gで進出するにしても電話機の価格はそう極端に高くすることはできません。そこでベトテルが持つ自社ブランド機材の調達や販売に関するノウハウを、ハイチテレコムに供与すれば、電話によるコミュニケーションの確保で地震被災者を元通りに立ち直らせる一助になります。