どこの国の株式市場でも、上場を維持するには厳しい条件がつけられています。上場企業はそれなりの社会的責任を負わなければなりませんが、ベトナムでは日本にはない規定もあります。上場企業は社会主義社会の基盤を担う重要な存在として、その存続が最優先に考えられているのです。

ビナファイナンスドットコムから引用:
 ホーチミン証券取引所はフルパワー(FPC)社の株式取引の一時的な停止について、次の通り発表した。(中略)取引停止理由:2年連続(2008年、2009年)の業績が赤字

 日本の場合は、株主の利益と利便が優先される上場規則になっていて、上場後に決算が赤字になったとしても直ちに上場廃止にはなりません。貸借対照表上で会社の負債総額が資産と資本の合計金額を上回る、債務超過になったときが問題です。

東京証券取引所HPから引用:
有価証券上場規程601条 本則市場の上場内国株券等が次の各号のいずれかに該当する場合には、その上場を廃止するものとする。この場合における当該各号の取扱いは施行規則で定める。
(5)上場会社がその事業年度の末日に債務超過の状態である場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき。ただし、当該上場会社が法律の規定に基づく再生手続若しくは更生手続又は私的整理に関するガイドライン研究会による「私的整理に関するガイドライン」に基づく整理を行うことにより、当該1年を経過した日から起算して1年以内に債務超過の状態でなくなることを計画している場合(当取引所が適当と認める場合に限る)には、2年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき。

 過去には、Jフロントリテイリングに統合される前の松坂屋の子会社だった「横浜松坂屋」(横浜市、2003年に上場廃止)が、地場である横浜・伊勢佐木町の沈滞で20年以上も赤字決算を続けていながら、債務超過や時価総額など他の上場廃止基準に該当しなかったため、上場を維持し続けた実績があります。

 しかし、ベトナムでは株主の利益よりも国営ないしは国家管理下の企業としての存続が優先されます。ホーチミンシティ、ハノイの両都市に設けられた証券市場ではほぼ毎日のように新規上場企業の申請と承認が発表されるなど、株式市場は目覚ましい伸びを見せていますが、一方で上場廃止や売買停止処分となる会社も出ています。

 ベトナムの証券市場で最も重要な規則、それは、赤字決算による売買停止の規程があることです。一番最初の記事にもあるように、通期決算が2期連続で赤字になると、一時売買停止になってしまいます。

 2期連続で赤字となった会社は、赤字決算が続いた理由を取引所に文書で説明し、次の通期決算を黒字にできるだけのはっきりとした目処を付け、その論拠を明確に示すことができなければ、取引を再開することはできません。それを満たして取引が再開されたとしても、3期連続赤字となった場合は上場廃止のピンチに陥ることもあり得ます。期間中の累積赤字が会社の純資産を上回るか債務超過に転落すれば上場廃止、そうでないと取引に制限が設けられます。

マネーベトナムドットコムから引用:
 コボビナ(銘柄コード:BBT)株の取引も午前10時15分から10時30分(取引3、板寄方式)に限定される。同社が3年連続で赤字に転落したため。ただし、証券法に違反しているわけではないので、上場廃止にはならない。

 この規定が設けられたのは、ベトナムの上場企業に政府が現在も過半数の株式を保有している旧国営企業が多く、赤字になれば国が受け取るべき配当収入や税収に影響が見込まれるためではないかと見られています。
 同じ社会主義体制下にある中国市場では、2002年に同様の規程が設けられました。3期連続赤字決算で売買停止、その直後の中間期で黒字に転換できなければ上場廃止されるというものです。

内藤証券(大阪)のHPから引用:
 3年連続で赤字となれば上場一時停止、またその6カ月後の中間決算で黒字化しなければ上場廃止となります。

 この制度を、後から市場ができたベトナムが見習ったのではないかと思えなくもありません。実際にベトナムで上場廃止にまで至ったのは過去には1社だけですが、今後増えることも予想され、投資のリスク管理は重要といえます。

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