しかし、ITmk3の真価は、鉱山から比較的近くに製鉄所を立地できることで最大限に発揮されると、会社側では述べています。
会社プレスリリースから引用:
鉱山会社にとっては、ITmk3プロセスを自社鉱山に建設しアイアン・ナゲットを生産することによって、資源に付加価値を付けることができるというメリットがあります。これにより、従来、高炉メーカーに限定されていた市場(需要家)を電炉メーカーにまで拡大することが可能となります。
そして、事実上西側先進工業国でなければ立地不可能だった製鉄所の立地を、新興国にまで広げることができるといいます。
会社プレスリリースから引用:
当社は、今回のITmk3商業機の操業開始を踏まえ、加速度的に世界市場に当プロセスの浸透・普及を進めていきます。加えて、この技術を活用する先駆者として、自ら参画するアイアン・ナゲット製造プロジェクトを北米、ベトナム、インド、ロシア、豪州等において、数百万トン規模で展開していく計画です。
今回のベトナムでのプロジェクトもまさにそれ。鉱山のあるタッケー(ハティン省)から、製鉄所を建設する予定のホアンマイ工業団地(ゲアン省)までは100kmもない目と鼻の先です。ベトナム最大の石炭生産地、ホンゲイ炭田も400kmちょっとで、石炭の海上輸送も可能。
しかも、ITmk3の回転炉には石炭をそのまま投入することができ、高炉製鉄では当たり前だった、コークスを作る必要もありません。石炭をコークス化するには天然ガスを燃やして蒸し焼きにしないといけません。ベトナムでも天然ガスは採れますが、コークス製造の過程で消費される分を考えると、少しでも多く輸出や輸送用燃料に回したいのは紛れもない願いであり、エネルギー生産国ベトナムとして、ITmk3は願ったり適ったりの最先端技術なのです。
神戸製鋼では現地法人を立ち上げてまずは回転炉2基を新設し、1基あたり年産60万トン(1日あたり1,600トン)、現在アメリカで稼動中のITmk3商業炉よりも若干大きな規模にします。2基ですので当然量も増えて年産120万トン。さらに将来は2基を増設して4基体制、年産240万トンまで拡張する予定になっています。
会社プレスリリースから引用:
現地時間3月31日にベトナム政府より、同国ゲアン省において年産240万トン規模のITmk3®プラントを二段階で建設(総事業費約1,000億円)するプロジェクトについての事業投資ライセンスを取得しました。
今後プロジェクト実施母体となる現地法人を直ちに設立し、2011年1月のプラント建設開始を目指して詳細企業化調査を実施する予定です。
総投資規模1,000億円(20兆ドン)という、一企業のものとしては超破格の大規模プロジェクト。将来は、新幹線施設の建設に使われる鉄骨がここから出荷されるかもしれません。