日産自動車(横浜市、東証1部上場)は、ベトナムに保有している合弁会社「ベトナム日産」の資本構成を組み換え、これまでのパートナーだった欧州資本との提携を解消する可能性を明らかにしました。
時事通信クアラルンプール支局電から引用:
マレーシアで日産車の組み立て・販売を手掛ける持ち株会社タンチョン・モーター(TCMH)の全額出資子会社ETCM(V)は、日産自動車とデンマーク企業ケア・グループがベトナムに設立した合弁有限会社「ベトナム日産会社(NVL)」に出資する計画だ。TCMHが22日、マレーシア証券取引所への開示情報を通じて発表した。
ベトナム日産は、元々ベトナムで日産車の輸入販売を手がけていた、デンマーク資本「ケアグループ」と日産グローバル本社の合弁で2008年11月に設立された会社です。
日産自動車のプレスリリースから引用:
日産自動車株式会社(本社:東京都中央区銀座 社長:カルロスゴーン)は8日、ベトナムにおける合弁会社「ベトナム日産会社」(NVL)の設立を発表した。現地パートナーはデンマークに本社を置く Kjaer Group A/S*(Kjaer:ケア)であり、NVLは12月中に営業を開始する。
ケアグループは以前から、ハノイに拠点を置く現地法人「モーターケア」をベースに、日産車の販売を手がけてきました。2008年11月にベトナム日産が設立された後は、同社株式(資本金1,000万ドル)の74%にあたる740万ドルを出資し、経営の主導権を握っていました。ところが、カンボジアとラオスでは日産のマレーシア向けノックダウン(現地組み立て)生産を担当するタンチョングループが日産製新車の独占販売権を既に取得しています。タンチョンには日産グローバル本社も少数株主として名を連ねており、タンチョン側の最終的な目標であるベトナムも含めた3カ国一括での事業展開にあたって、日産との資本関係がないケアグループの存在がネックになっていました。
時事通信クアラルンプール支局電から引用:
日産は10年8月末時点で、TCMHに5.72%出資している。
そこで、タンチョンではケアグループから保有するベトナム日産株をすべて引き取る方針を決めました。
時事通信クアラルンプール支局電から引用:
ETCM(V)は具体的に、ケア・グループのNVLへの出資分74%を740万ドルで買収する。買収が完了すると、NVLへの出資比率はETCM(V)が74%、日産自動車が26%となり、NVLはTCMHグループの子会社 となる。ただ、出資には、ベトナム政府当局から認可を得ることが条件となる。(中略)ETCM(V)がNVLの新たな出資者としてベトナム政府当局から認められた場合、ETCM(V)の出資分の一部を、日産の出資が50%を超えない範囲で同社が購入することを認めるオプションを設定する。
計画が実現すれば、比率はそのままでケアグループからタンチョングループに持ち分が移行する計算。さらにオプションも行使されると、最大でタンチョン51%、日産49%という出資構成も可能になり、現地組み立て(ベトナムモーターズに委託)を開始したベトナム日産に対し、日本(グローバル本社)からの資本投入がやりやすくなります。また、ASEAN域内に拠点を置きASEAN自由貿易体制にも精通するタンチョンが出資することで、自由貿易地域の活用がよりたやすくなる利点があります。さらにタンチョンが進出済みのカンボジア、ラオス市場と組み合わせれば、ベトナムで現地組み立てされたクルマを両国に輸出でき、生産台数を増やすことができます。有望な新興市場ベトナムで、今まで以上に有利な事業展開を行うには、タンチョンの関与が不可欠と判断した模様です。
タンチョングループでは年内にも政府の認可と日産グローバル本社の承認を得て、ケアグループから株式を買い付けたい意向。2010年度はベトナムでの日産車の売り上げが伸び悩んでおり、ベトナム日産は税引き前赤字を出しています。
時事通信クアラルンプール支局電から引用:
NVLの10年1~7月の日産車販売台数は249台で、1~7月の売上高は738万ドル、税引き前損失は235万ドルだった。
そういう事情もあって、ケアグループは売却益を得られなかったとしても設立時の引き受け金額を回収できるタンチョンへの売却を了解するのではないかと消息筋は見ています。