ソニーの完全子会社でテレビゲーム機「プレイステーション」を手がけるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE、東京都港区)は、1月16日からベトナムの正規ルートでプレイステーションや関連商品の販売を始めたと発表しました。ベトナムは日本を除くアジアで、正規品販売やサポートなどの本格的な事業(社内通称「プレイステーションビジネス」)を行うのは、2009年10月のインドネシアに次ぐもので、タイやシンガポールなどに続いて8カ国目です。特に、共産圏への進出は初めてとなります。
日経産業新聞から引用:
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、ベトナムでゲーム機事業を開始した。家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)3」などと対応ソフトを順次投入する。ゲーム機メーカーとしてベトナムに正式に進出するのはSCEが初めてという。アジアでの展開は8カ国目。日米欧の販売を中心に事業展開を進めてきたが、経済発展で有望市場となっている新興国を開拓する。
SCEはベトナム市場向けに、最新鋭の「プレイステーション3」と、一世代前に相当しながら現在も販売が続く名機種「プレイステーション2」、それに携帯ゲーム機「PSP」を投入します。
ベトナムのゲーム機市場は、日本や韓国、中国といった北東アジアの先進国から、いわば「闇ルート」で輸入された機種が中心でした。ホーチミンシティでは、タイなどで海賊版のソフトを読み込めるように改造された中古のプレステ2に300万ドンの値札がついているといいます。それどころか、8ビットファミコンと同じシステムが初代プレイステーションとそっくりの筐体に収められている「パチもの」互換機があったり、ニンテンドーDS以前の初代ゲームボーイが子供たちの間ではまだまだ現役だったり。日本からプレステ2を持ち込んだ駐在員家族や現地採用もいましたが、ソフトの入手でかなり苦労していました。
プレステ2の場合、個人には普及せず、ネット屋とよく似た形でパソコンではなく、ゲーム機を置いている「ゲーム屋」がまとめて購入するのがほとんどでした。しかし、ベトナムは人口の3分の2がサイゴン陥落以降に生まれた「若い国」。社会主義初期に生まれた革命第一世代の子供たち、いわば革命第二世代もどんどん増えています。そんなベトナムには、無尽蔵のビジネスチャンスが広がっているとSCEは判断したのです。
SCEは1994年、初代プレイステーションを発売。それから6年を経た2000年、2世代目としてプレステ2を発売します。当初はあまりの高性能に兵器転用の可能性まで指摘され、ベトナムを含む共産圏への輸出を規制される事態になってしまいます。後に規制は解除されますが、タイやマレーシア、シンガポールといった他のASEAN諸国に比べ、ベトナムへの普及は大きく遅れてしまいました。2006年にプレステ3が発売された後も、SCEは日本やアメリカといった西側先進諸国を最優先に位置づけ、東南アジアではプレステ2どころか初代プレステ(PSone)が現役として販売され続けた国もありました。
今回、発売10周年を経て技術的に「枯れた」プレステ2と、最新鋭のプレステ3を同時に投入することは、プレステ2を8ビットファミコンや初代プレステに代わる普及機として考えていることの現れと言えるのではないでしょうか。
プレステ2は、ベトナムでは希望小売価格449万ドン(2万円)。日本ではオープン価格ですが大手量販店のネット通販では16,000円なので、4割ほど高くなります。日本市場が飽和状態になる中で、未開拓のベトナム市場で広く家庭に普及させることで、大きな利益の期待をかけているのではないかと、ふくちゃんは分析します。
プレステ3は、希望小売価格999万ドン(49,000円)。日本では希望小売価格29,980円なので、1.6倍の値段ということになります。ハードディスクも120GBのみ。日本で販売されている250GBタイプは投入を見送りました。
一方、PSPは希望小売価格599万ドン(29,000円)。日本では16,800円ですから、こちらは約2倍になってしまいます。しかも、日本では最新機種の「PSPgo」ではなく、1つ前のPSPです。
それでも変圧器を買わなければいけないなど、リスクのある中古品よりも、そのままコンセントにつなげて正規のサポートも受けられる新品。質の高さを求めて中国製モーターバイクを事実上却下したこともあるベトナム市場に、きっと受け入れられると思います。