国営エネルギー総合企業ペトロベトナムは、総額3兆円にもおよぶ中長期の投資計画について日本からの資金導入を予定していると前に書きました。21日、ディン・ラー・タン会長率いるペトロベトナム最高幹部一行が東京へ向けて出発。翌22日、東京・赤坂のジェトロ(独立行政法人日本貿易振興機構)本部で行われた「ベトナムインフラシステム投資セミナー」に臨みました。
時事通信から引用:
ディン・ラー・タン会長は「日本とは長い協力関係があり、先端技術に信頼を置いている。日本企業に優先的に投資を呼び掛けたい」と話した。
その金融パートナーとして、三井住友フィナンシャルグループと大和証券キャピタル・マーケッツ(大和CM、旧社名大和証券SMBC)が選ばれ、両社は覚書を交わしました。
大和CMのニュースリリースから引用:
大和証券キャピタル・マーケッツは、6月21日、ベトナム最大企業である国営ペトロベトナムとの資金調達における協力等にかかる覚書(MOU)に調印いたしました。なお、ペトロベトナムとの同様なMOU締結は日系証券初となります。
三井住友銀行のニュースリリースから引用:
株式会社三井住友銀行(頭取:奥正之)は、本日、ベトナム最大の国営企業であり、石油・ガスの上流開発から下流分野までを所管するベトナム石油ガスグループ(Vietnam Oil and Gas Group、以下「ペトロベトナム」)と、同社が今後実施するプロジェクトに必要な長期資金の調達に関する支援を主目的とした覚書を締結致しました。三井住友銀行は、今回の覚書締結を機に、ペトロベトナムとのより一層のリレーションシップ強化を図り、ベトナムにおけるさらなる業務拡大、プレゼンス向上を図ってまいります。
ペトロベトナム側の計画によりますと、今回の中長期計画にかかる資金の70%を外資導入、残り30%を自己資金でまかなうといいます。その際の外資パートナーとして日本を最優先に考えていました。
一方日本側では、国際協力銀行に加え3メガバンク(三菱東京UFJ、みずほコーポレート、三井住友)、さらにアメリカ流の投資銀行業務を手がける大手証券会社(大和CM、野村證券、日興コーディアル証券、シティグループ証券=旧日興シティグループ証券)に参加の可能性を打診してきました。
大和CMでは、アジア地域に特化した海外戦略を打ち出し、2007年、ハノイに駐在員事務所を開設。ペトロベトナムを初めとする国営の大企業との調整や、投資ファンドの構築などを進めてきました。
大和CMのニュースリリースから引用:
当社グループがこれまで築き上げたペトロベトナムグループとの信頼関係および当社のアジアに対するコミットメントやこれまでの実績への評価をもとに実現したものと考えております。ベトナム最大企業のビジネス拡大をサポートすることで、我々はベトナムの経済発展に貢献することができると確信しております。
一方、三井住友フィナンシャルグループは昨年、日興コーディアル証券を買収。旧住友銀行時代(旧社名:大和証券SBキャピタルマーケッツ)からの10年にわたる大和CMでの合弁関係を解消しました。しかし、日興コーディアル証券のホールセール業務(投資銀行本部)は旧日興シティグループ証券時代の実績があるものの、事実上ゼロからの出発。同じ三井住友フィナンシャルグループ内に古くからある「SMBCフレンド証券」では手がけたことがありません。そこで日興コーディアル証券に担わせる新規案件とともに、大和SMBC時代から続く既存の案件も是々非々で継続し、大和CMを含めた大和証券グループ全体のメインバンクとして協力できることは協力することにしているといいます。
三井住友フィナンシャルグループのニュースリリースから引用:
SMFGと(大和CMの親会社たる)大和証券グループ本社との友好関係及び信頼関係は、長い歴史の中で培われてきたものであり、株式会社三井住友銀行が大和証券グループのメインバンクであることを含め、今後もその関係に何ら変化はないことを両社で確認しております。
その結果のひとつとして、今回、日興コーディアルではなく、大和CMと三井住友銀行が共同パートナーに選ばれたと理解するべきで、枠組みが変わったからといってなんら驚くべきことではないのです。
日経Web刊から引用:
大和はサムライ債の発行やPVN傘下企業の海外上場に主幹事として協力。巨額投資が円滑に進むよう後押しする。(中略)具体的な資金調達の時期や手法は、PVNのプロジェクト計画に基づいて今後詰める。
ベトナムの全GDPの16%、歳入の24%を稼ぎ出すPVN。大和証券のアジア戦略の中で、PVNは最も重要な位置を担うことになりそうです。