ベトナム南部、国内最大のバクホー油田に近いブンタウ省沖の南シナ海ではペトロベトナムと国際石油メジャーの合弁で新たな油田の開発が次々と予定されていますが、このうちの1つの鉱区に日本政府が資金を投入すると発表しました。

 JXホールディングス傘下で海外での油田開発を手がける、新日本石油開発(7月1日付けで「JX日鉱日石開発」に社名変更予定。東京都港区)が乗り込む予定の鉱区で実際に探鉱を行うための子会社「新日石クーロン石油開発」(7月1日付けで「JX日鉱日石クーロン石油開発」に社名変更予定。東京都港区)の追加出資を独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構が引き受ける形で、国庫金を投入するものです。

新日本石油のプレスリリースから引用:
 当社グループは、東南アジアを上流部門における重点事業地域の一つと位置づけており、特にベトナムにおいては、オペレーターとしてプロジェクトを推進している15-2鉱区(ランドン油田、フンドン油田)、パートナーとして参画している5-1b/c鉱区に続き、3つ目のプロジェクトの展開となります。

 バクホー油田はペトロベトナムにとってまさにドル箱といえる大油田ですが、この近くにある一角が、今回の対象になる鉱区です。ペトロベトナムはこの鉱区をJXの前身の新日本石油、それにロシア政府と共に開発することにし、日本側に40%、ロシアに15%の権益を渡していました。

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構のニュースリリースから引用:
 新日本石油開発(株)は、2007年11月にベトナム国営石油会社ペトロベトナムと生産分与契約を締結し、ベトナム南部海上16-2鉱区の権益40%を取得しました。本年4月には、本格的な探鉱作業の開始に伴い、本プロジェクトの実施主体として「新日石クーロン石油開発株式会社」を設立したところで、JOGMEC は同社に対して出資を行う予定です。

 日本にとって、石油の90%以上を中東からの輸入に依存する体質はエネルギー安保の面でさまざまなリスクを負います。東南アジアからの輸入を増やすことができればリスクは大きく軽減されますが、ブルネイやインドネシア、マレーシアなどでは既にある程度まで開発が進んでしまっています。このため長いベトナム戦争で開発が遅れていたベトナム南部の油田は、日本にとって宝の山とも言える状況になっているのです。

 機構では、新日石クーロン改め、JX日鉱日石クーロン石油開発の追加出資に応じて資本金の75%に相当する56億円を投入するとしました。ただし、JXグループに経営の主導権を残すため、発行済み株式の49%相当を超える分については議決権なしとする逆転技を使います。議決権ベースではJXグループが51%を保有し、JX日鉱日石開発の連結子会社となります。

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構のニュースリリースから引用:
 今後機構は対象事業費の75%を出資予定。なお、出資に際して普通株式の引受は50%未満とし、残りは無議決権株式の引受により行う。(中略)期待される石油ガス埋蔵量が大きいこと、出資対象事業の共同事業者間における本邦法人の権益比率が30%以上であることから、75%出資対象案件として採択することとした。

 JX日鉱日石クーロンでは、親会社のJX日鉱日石開発が持つ最先端の技術を惜しみなく投入し、2015年前後に原油の商業生産開始を目指します。JX日鉱日石開発では、16-2鉱区内に有望な埋蔵エリアが既にあるとホームページで公開しており、探鉱に成功して機構は投入する資金を回収どころか、配当という形で利益を獲得できる可能性も高くなっています。

JX日鉱日石開発のホームページから引用:
 ランドン油田およびフンドン油田は、花崗岩質基盤岩内に発達したフラクチャー(岩石の割れ目)が貯留層(石油の溜まっている地層)となっている油田です。これは世界でも例が少なく、当社のフラクチャー評価技術は国際的に高い評価を受けています。現在、こうした先端技術や、水平坑井掘削技術(貯留層を水平に掘削)等を効率的に活用し、生産能力のさらなる向上を目指して日夜活動を行っています。

 現在、JXグループは子会社「日本ベトナム石油」を通じてランドン油田で日量4万バレルの生産を行っており、全量を日本に輸出していますが、果たしてランドン油田を上回る大規模な生産が今回の鉱区でできるか? 日本側は大きな期待を寄せています。

メインメニュー

開発と日系企業一覧

携帯サイト