国土交通大臣・前原誠司(民主党元代表、衆院京都2区)と、国家戦略担当特命大臣・仙石由人(民主党、衆院徳島1区)は3日、ハノイに飛んでグエン・タン・ズン首相らとベトナムの最高指導幹部と会談しました。会談では、新幹線導入問題が最大の議題となり、前向きに検討する姿勢を示しました。

 まず、前原大臣がホー・ギア・ズン交通運輸大臣と協議。この席ではハノイからホーチミンシティまでの1,600kmで概算5兆円という途方もない規模に膨れ上がる総工費が課題とされました。

時事通信から引用:
 先行開業区間を限定するなど、段階的な整備を目指すよう提案した。

 国土交通省では、ベトナムでの新幹線計画の具体的な工費として、ハノイとビン、ホーチミンシティとニャチャンの2区間が予定されている第1期区間だけで、それぞれ1兆円、合計2兆円と見積もっています。そして残りのビンとニャチャンの区間で3兆円というわけです。全額円借款という訳にはとても行かないでしょう。前々にも書きましたが、日・メコンサミットで打ち出された大メコン圏諸国への借款投資拡大規模を大きく上回るだけに、全区間一気などとても無理です。そこで前原大臣は、第1期の区間をもっと短縮するか、どちらか一方に絞るか、あるいは開業時期を遅らせるかの検討をするよう、ズン大臣に求めました。これに対し、ズン大臣は前向きに検討すると述べました。

時事通信から引用:
 ベトナム側も柔軟に対応する姿勢を示し、両国間で今後、詳細を詰めることを確認した。

 それと同時に、第1期開業区間内での沿線開発についても並行して進めなければならないとしました。

日経Web刊から引用:
 仙石大臣は「人口が集中している(両都市からそれぞれ)100キロ以内で建設着手に何が必要か調査するための協議を開始する」と述べた。

 ホーチミンシティからニャチャンの区間だけを先行着手すれば、ニャチャンやカムラン湾を訪れる外国人観光客の需要が見込めます。しかし、ハノイからビンの区間では、これといった観光地はありません。第2次産業関係者の需要がある程度見込めはしますが、採算が取れるほどかは未知数。ビンからラオスのビエンチャンに抜ける外国人観光客もラオス人以外はバックパッカーなど少数に限られています。南北同時に着工して、最後にダナンでつなぐというベトナム側の構想には、どうしても大きな難関が待ち構えています。

 2020年にハノイとビン、ホーチミンシティとニャチャンの2区間を同時に開業できるかも現時点では読めません。日本側は、インフラ側の原因での列車事故が過去に1度も起きていない(飛び込み自殺などの例はあります)ことが、新幹線技術を輸出する中で最大の売りだけに、突貫工事や手抜き工事をされてまで工期を守るということは絶対に許されません。ですから最悪、第1期開業の時期を遅らせることも止むを得ないのではないかという意向をズン大臣に伝えたとみられています。

 これに対し、第1期区間の開業が遅れたとしても全線開通は計画通り今後25年間で行けるとの見解が事前に示されていました。

時事通信から引用:
 ボー・ホン・フック計画投資相は15日、都内で時事通信のインタビューに応じ、(中略)日本の新幹線方式採用を閣議決定した南北高速鉄道計画について、目標とする2035年の全線開通は可能だと強調した。

 しかし、日本の別の報道機関からはベトナム側の計画に無理がありすぎるとの指摘もなされています。

TBSテレビ「Newsi」から引用:
 ベトナム側の描くあまりの非現実的な計画に日本側がまったをかける場面もありました。

 前原大臣は、今後の両国間協議で摺り合わせることは可能だとの手応えを掴んだ模様で、国会での正式決定を待って、具体的な支援策の検討に入るとしました。その後、新幹線の北のターミナルになる予定のハノイ駅を視察しました。

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