日本のカジュアル衣料最大手、ユニクロは新興国での大量生産によって製造コストを極限まで削っています。一時は中国での生産が全体の9割を占めた時代もありましたが、近年分散が進んでいます。ベトナムも、そのひとつを担っています。
東レのプレスリリースから引用:
株式会社ユニクロと東レ株式会社は、この度、「戦略的パートナーシップ第二期5ヵ年計画」に関する合意書を締結致しました。(中略)東レは長期的な安定供給基盤を構築し、ユニクロは世界ナンバーワンの製造小売業を作り上げることを目指してまいります。
ユニクロの代表的な製品といえば、古くは冬用の「フリース」、最近では冬用肌着「ヒートテック」や、「ブラトップ」が有名。これら製品に使う素材は、繊維素材大手の東レとの包括提携によって新興国にある東レの工場からユニクロの工場へ最優先で供給されていきます。
ベトナムにあるユニクロのパートナー(協力)工場は、タイやインドネシアにある東レの現地法人と連携していて、東レは会社HPで公表していないもののベトナムにも拠点が既にあるといいます。
西村康稔代議士(自民党・衆議院兵庫9区)HPから引用:
ユニクロもベトナム南部で委託生産を行っており、ある意味で、ベトナムは、最近では中国に代わる繊維産業大国・生産拠点となっている。
これを統括するのが、ホーチミンシティにあるユニクロの生産管理事務所です。
ユニクロのホームページから引用:
上海、シンセン、ホーチミン、ダッカの生産管理事務所には、合計170人のユニクロ生産管理担当者が常駐し、毎週工場に出向いて、商品の品質のチェックなどを行なっています。
また、カンボジアにはジーユー(ユニクロの兄弟会社、正式社名GOVリテイリング)の縫製工場もあり、日本で980円で売られているGパンは、ここから送り出されていきます。バングラデシュでは、素材から縫製までの一貫体制を取れる新工場を東レが立ち上げ、ユニクロに全量供給することで合意しました。
日経Web刊から引用:
バングラデシュの新工場は素材の編み、染めから、衣料への縫製までを担う一貫生産拠点。東レが今年、バングラデシュや中国の企業と合弁で設立した。合弁企業名や出資額は公表しない。東レは同工場をユニクロ向けの機能性肌着などの生産拠点として活用する方針だ。
では、ベトナムではどんな製品が作られているのでしょう? 既にユニクロとジーユーを合わせた全製品の1割以上がベトナムやカンボジア製だとはいいますが、ふくちゃんの手元には「MADE IN VIET NAM」のユニクロ製品はありません。一時帰国したときも、「MADE IN CAMBODIA」と書かれたジーユーのGパンは見ましたが、結局買いませんでした。
ユニクロの協力工場では、ユニクロ以外の製品も生産していることがあり、そうなると、ユニクロの求める品質に合わせて他のブランドの製品の質も上がっていくのが普通です。ふくちゃんは先日、バンコクの大型ショッピングセンター「テスコロータス」でズボンを一着買いました。タグには「EUR**」と、ユーロ建ての値段表記があり、欧州圏向けに輸出される品物が横流れされたとすぐわかりました。しかし、商品についている品質表示を見ると、「MADE IN VIET NAM」だったのです。ユニクロと同等かそれ以上の高い品質が求められる欧米先進諸国向けの輸出商品は、ASEAN域内でもそれなりのレベルの商品として扱うことができるのです。
一方、タイとカンボジアの国境にあるロンクルア市場(サケオ県アランヤプラテート郡)では、たまに中古と思しきユニクロ製品が売られているのを見ることがあります。以前は中国の工場からの横流しではないかという噂が立ったこともありますが、その後の調べで日本向けに売られた製品が日本のNGOを通じてカンボジアに渡り、換金商品と化したと明らかにされています。
東京で編集されている「探偵ファイル」から引用:
某国(タイ)と某国(カンボジア)の国境近く、とあるエリア(ロンクルア市場)が、「横流し市場」となっているのだ。主に古着類が集められてクリーニングされ、販売されている。(中略)メイドインフランスの服、1着200円程度。古着だが状態は良い... ちなみに200円というのは1着の値段で、20着で3000円・100着で1万円と、まとめ買いすればするほど、オトクな料金設定になっている。
そこで売られているのはどんな理由であれ、ベトナムなどASEAN域内や中国、韓国から一度先進諸国向けに輸出された品物なので、品質がいい訳です。店のオーナーは「バンコクの古着屋が一度に数百着とかまとめて買っていくことが多い」と語っています。
ユニクロがベトナム戦略を成功させれば、ASEAN域内の衣料品の質の向上にも寄与する。これからも目が離せません。