日本の総合電機大手、東芝(東京都港区、東証1部上場)が、ベトナムにある液晶テレビの工場を引き揚げ、インドネシアに集中させる可能性があることがわかりました。もし実現すれば、ドイモイ政策以後のベトナムから工場を撤退させる日本企業というのは極めて異例のことになります。
日本経済新聞から引用:
 日立製作所や東芝など大手電機メーカーが薄型テレビの自社生産を縮小する。日立は中国生産を打ち切り、国内に1工場だけを残す。東芝はベトナム生産から撤退する。

 東芝は、1996年にホーチミンシティ行政圏に進出。当時まだ液晶テレビはなかったため、ブラウン管式カラーテレビの製造から始めました。

会社プレスリリースから引用:
 当社は、ベトナムにおけるカラーテレビの需要拡大に対応するため、ベトナム・ホーチミン市に、カラーテレビの製造・販売を行う合弁会社「東芝家電ベトナム社(Toshiba Vietnam Consumer Products Co.,Ltd.)」をベトナムの国営企業「ビエトロニクス・ツードック社(Viettronics Thu Duc Company)」との合弁で設立しました。
 14インチ、20インチ、21インチ中心に生産する計画で、ベトナム国内で販売するほか、周辺アジア諸国へも輸出する予定です。

 その後2001年には冷蔵庫を皮切りに白物家電にも進出しますが、今回生産を止める予定の液晶テレビは日本本社が同業他社に比べて大きく出遅れた代物。2003年まで自社モデルを出さず、発売した後も日本国内向けは国産(深谷工場:埼玉県深谷市)にこだわりました。一方で、総人口がベトナムの3倍近くに上るインドネシアを東芝は重要市場と位置づけ、積極的な展開を試みます。

会社プレスリリースから引用:
 当社は、アセアン諸国の中でも最も人口も多く潜在的な購買力の高いインドネシア市場を重要市場のひとつと捉えています。今後も東芝家電製造インドネシア社を中心にデジタル家電、白物家電事業等の拡大を図り、2010年度にはこれら事業を核に200億円の売上を目指しています。

 まず1999年、シンガポールにあったブラウン管式テレビの工場を閉鎖してインドネシアに集中。この時はベトナムのラインは残りました。その後2004年には日本(太子分工場:兵庫県姫路市)からもラインを全面移転。この時点で日本向けには液晶テレビのみを販売するようにしました。
 ところが、インドネシアとベトナム、ASEAN圏内だけで2箇所の液晶テレビ生産ラインを持つのはコスト高につながると判断した模様。既にアメリカ向けでは台湾のOEM専門メーカーに生産を委託しており、国内向けも高級品に特化。東南アジア向けでも徐々にOEM品の割合を高めるようになり、テレビの製造ラインをインドネシアに集中させた過去の実績からも、ベトナムの液晶テレビ製造ラインが設備過剰と指摘されるようになるのは明らかでした。
 ホーチミンシティで発行されている経済紙「トイテー」の記者が東京の東芝本社広報部に確認したところ、次のような回答がありました。

VIETJOから引用:
 「東芝家電ベトナム社の生産活動停止の可能性について検討しているが、最終決定には至っていない」と明らかにした。

 これについて、生産停止の対象が液晶テレビ部門だけなのか、それとも他の製品も含めた企業全体としてなのかについては明らかにされていません。ただ、東芝はベトナムでは冷蔵庫を製造する会社は冷蔵庫だけ、精密部品は精密部品だけと、事業領域ごとに分社化が行われているため、万が一工場撤退となった場合でも、ベトナムではテレビ部門の製造だけが止まり、インドネシアからASEAN自由貿易制度を使って無関税で輸入された製品が、引き続き東芝家電ベトナム社によって販売される事になりそうです。

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