ベトナムに工場を建設して製品の製造を行おうとする外国企業は、計画投資省から「外国直接投資にかかる認可」(FDI)を得ないといけません。しかし、認可を受けても投資が進まなかったり、途中で計画変更になる例も後を絶ちません。ベトナムにとって有益なプロジェクトのみが残るようにしないと、後々に大きな悪影響を及ぼします。
ビナファイナンスドットコムから引用:
計画投資省外国投資局(FIB)は、FDI実行率を引き上げる為に投資基準に満たないプロジェクトの管理を強化することを要請されている。
1年間に実行された金額を、新たに認可された金額で割ったのが「実行率」です。この実行率が低い、もしくは実行された金額が新規認可額を下回ると、西側先進諸国の投資家に本気で相手されていないと見られ、新規投資額が減る要因になります。
ビナファイナンスドットコムから引用:
ベトナムのFDI指数を分析するときには、しばしば、経済専門家はFDIの新規認可額とその実行率を比較する。例えば、FDI実行総額が新規認可額より大幅に低い場合、投資家はベトナムへの投資を約束はするが、本気で実行していないということになる。
また、国営企業が絡んだ投資計画は絵に描いた餅になってしまうこともあります。最近も、ビナシン(造船グループ)がマレーシア資本と組んで行う予定だった製鉄所の建設計画が全く進んでおらず、計画投資省は商工省とも協議の上、投資認可を取り消しました。
VIETJOから引用:
東南部ニントゥアン省ニンフオック郡で建設が滞ったままになっている「カナ鉄鋼コンビナート」建設案件は、投資認可が取り消される可能性が高くなった。
ビナシンをめぐっては、韓国のポスコと合弁を組む予定だった高炉一貫型製鉄所の計画でも当初10億ドルと見込まれていた出資を見送りました。結果的にはこれが、ビナシンに重大危機を招き、そしてさらに悪化させた形になりました。
VIETJOから引用:
ベトナム造船産業グループ(ビナシン)は22日、南中部カインホア省バンフォン湾で計画されている韓国のポスコグループとの合弁による一貫製鉄所建設案件に出資しないことを決めたと発表した。この案件の総投資額40億米ドル(約4300億円)のうち、10億米ドル(約1080億円)をビナシンが出資する予定になっていた。
ただでさえ10億ドル規模の出資を見送り、24億ドル規模の投資に乗り換えてしまえば、それだけで14億ドルもの追加出資が必要になります。これではお話になりません。ましてや、それが起工式だけやってその後事実上のお流れになってしまったのでは、破綻して当たり前であり、逮捕された前会長ファム・タイン・ビン容疑者以下旧経営陣は断固として非難されるべきです。
VIETJOから引用:
同案件については、2008年にマレーシアのライオングループとベトナム造船産業グループ(ビナシン)の合弁会社による投資が認可されている。鉄鋼案件としては総投資額98億ドル(約8700億円)と国内最大規模で、出資比率はライオンが76%、ビナシンが24%。2008年11月に着工式が行われたが、その後工事はストップしたままになっている。
それだけではありません。環境への影響が懸念されるプロジェクトも同様です。タイのマプタプット問題では、停止命令に追い込まれたプロジェクトの大部分が再開できる方向になりましたが、一部は他国への移転を検討しました。その中にはベトナムも当然含まれています。タイでも悪影響の指摘された事業をベトナムに押し付けられては、とてもたまったもんじゃありません。
ビナファイナンスドットコムから引用:
FDIプロジェクトの実行を市民レベルで再検討することと品質の低いプロジェクトに対する断固とした対策の実施が要求された。また、古い技術を使用し、環境へ悪影響を与えるプロジェクトを認可すべきではない、実行が遅いFDIプロジェクトの許可証及び土地使用権を取り消すべきだという意見があった。
幸い、日系企業関係のプロジェクトはほとんどが止まることなく遂行されていますが、今後も第二、第三のビナシンが出てくる可能性は否定できません。常に経済事情と企業の動向を正確に把握し、その時々にあった最適な判断をする必要が求められています。ベトナムを撤退していく企業が出るのは、生産のグローバル化による移動だけでなく、判断ミスによるところも多いと言われています。