ベトナムでは日本の大手自動車メーカー2社(トヨタ自動車、ホンダ)が進出して、乗用車の生産を行っていますが、地場のメーカーも育ってきています。今はまだ中国メーカーのノックダウンやライセンス生産が中心ですが、ついに国産乗用車を発表できるところまで来ました。
VIETJOから引用:
地場自動車メーカーのスアンキエン自動車会社(ビナスキ)は、同社が設計・製造を手掛ける乗用車2車種を9月に発表する予定だ。トラックやバスの製造を行っている地場メーカーはあるが、乗用車の製造は同社が初めて。
ビナスキは中国の華晨汽車(ブリリアンス)の系列として設立された会社です。親会社の華晨汽車はトヨタ自動車のワンボックスバン「ハイエース」をライセンス生産して成長した会社ですが、ビナスキを立ち上げるにあたって、中国の省級自動車メーカーがそうしたように、まずは商用車分野から入っていきました。
在ハノイ日本大使館ホームページ「大使のよもやま話」から引用:
ベトナムの有力自動車メーカーであるビナスキ社のブイ・ゴック・ヒュエン社長が大使館を訪ねてくれました。ビナスキ社は1,200人ほどの社員を有し、ピックアップ・トラックなどを製造・販売している会社ですが、日本から5人の技術者が常駐して技術指導をしているようです。これからは、外国メーカーと協力して小型乗用車の製造を本格的に手掛けたいとのことでした。
ラオスにもビナスキとよく似た商用車のライセンス生産を手がけるメーカー「KOLAO」がありますが、こちらは韓国の現代自動車のキャブオーバートラック「ポーター」(日本名:三菱デリカトラック)をライセンス生産しています。
日本アセアンセンターのホームページから引用:
ラオスにおいてKOLAO社が組み立てているオートバイとトラックは韓国投資の象徴的存在となっている。
ちなみにKOLAOポーターは、ラオス国外への輸出はされておらず、タイでは友好橋でつながっているノンカイ県とムクダハン県で稀にお目にかかるだけ、ベトナムでも見る機会がありません。
そんなこともあって地味な存在だったベトナムの地場メーカーですが、ビナスキは日本人技術者を積極的に雇用し、乗用車の生産に取り組めるだけの技量をつけてきました。その結果、韓国メーカーからのノックダウン契約を受注するに至ります。
VIETJOから引用:
韓国・サンヨン(双竜)自動車はこのほど、ベトナムのスアンキエン自動車株式会社(ビナスキ)との間で、今後5年間に1万5,500台分の自動車部品を取引する契約を締結した。ビナスキは同社工場で、サンヨンの定員7人の多目的スポーツ車(SUV)「カイロン(Kyron)」をCKD(コンプリート・ノックダウン)方式で生産する。
そして、親会社の協力もあって、ついに自社ブランドの乗用車を売り出せるメドがつきました。当初予定されていた中国・長安汽車集団(旧哈飛汽車)からの設計図導入ではなく、自社での設計からスタートさせようという、本格メーカーへの第一歩を踏み出しました。
ビナスキが9月にも発表する予定の自社ブランド乗用車第一号は、通常の5人乗り乗用車と7人乗りのマルチパーパスバン(MPV)になるとしています。このMPVというのがひっかかるところですが、逆に予想する側にとっては楽しい存在です。
ASEAN域内では、インドネシアでスズキが「APV」(日本の軽バン「エブリィ」を大きくして乗用化したもの)や、トヨタ自動車が「アバンザ」(日本のヴォクシーを一回り小さくしたもの)、「グランマックス」(日本名ライトエース)を生産しており、またトヨタはタイで「ウィッシュ」(日本名同じ)を生産していますが、これらと同じラインになります。
トヨタ自動車のニュースリリースから引用:
TOYOTAは、タウンエースならびにライトエースのバンおよびトラックをフルモデルチェンジし、タウンエースは全国のトヨタカローラ店、ライトエースは全国のネッツ店を通じて、(2008年)2月25日より発売する。(中略)なお、新型車の車両企画は、ダイハツ工業(株)(以下、ダイハツ)と共同で行い、開発・生産は、ダイハツが担当し、OEM供給を受けるものである。
ウイッシュは7人乗りで2000cc、アバンザは1300ccのエンジンを積みますが、ビナスキはどれだけの排気量のエンジンを出してくるのか、楽しみなところです。1300cc~1500ccのラインなら、アバンザやAPVの好敵手になるでしょう。それ以上なら、ウィッシュやグランマックスのライバルとして注目されることになるはずです。
ビナスキは果たして、マレーシアのプロドゥアのような、国民車メーカーになれるのでしょうか? それとも、現代自動車のようなガラパゴスメーカーに終わってしまうのでしょうか? 9月の発表が楽しみです。